研究実績の概要 |
センダイウイルス (SeV) C蛋白質はウイルス病原性に極めて重要であるが, 関わる機能の全てを既存の標的蛋白質との結合だけでは十分に説明することが出来ない。本研究の目的はC蛋白質の新規標的蛋白質を同定し, この標的蛋白質との結合が関わる機能およびその分子基盤を解明することである。酵母two hybrid法よりC蛋白質の新規標的因子として見出した転写調節因子を単一に精製し、ゲルろ過分析よりC蛋白質と結合することを明らかにした。またC蛋白質がこの転写調節因子のN末端ドメインを標的とすることを明らかにした。SEC-MALS解析およびNative MS解析の結果と合わせると、C蛋白質とこの標的転写調節因子は、1:2の化学量論で複合体を形成することが示唆された。さらに親和性解析を実施したところ、既存の標的蛋白質 (STAT1, Alix) と比較して, 約10倍ほど低い親和性でこの転写調節因子と結合することが明らかになった。C蛋白質と新規標的転写調節因子との間の相互作用は一過性で弱い相互作用であり、このため免疫共沈降法などの分子生物学的手法では検出困難だったと考えられる。この新規標的転写調節因子との親和性が著しく減少するC蛋白質のアミノ酸変異を同定し、SeVのゲノムにこの点変異を導入した。作出した組換えSeVを培養細胞に感染させたところ、抗ウイルス性サイトカインであるインターフェロン (IFN) -γに対する感受性は変化しなかったが, もうひとつのサイトカインであるIFN-α/βに対する感受性は有意に増加した。C蛋白質と新規標的転写調節因子との間の結合はウイルスの感染細胞内における環境の適応に重要であり、臓器親和性に関与することが示唆される。
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