今年度は、昨年発現精製を行ったFANCMヘリカーゼドメインの生化学的解析とクライオ電子顕微鏡構造解析を行った。生化学的解析では分岐構造を含む様々な二重鎖DNAとの結合をゲルシフト法により解析した。その結果、FANCMヘリカーゼドメインは分岐構造を有したDNAに対して、より強く結合する事がわかった。一方、電子顕微鏡解析においては、ヘリカーゼドメインの分子量が約80kDaと小さいため、測定に不十分であったことから、MBPとの融合タンパク質を調整した。異なるタンパク質濃度や塩濃度において測定を行ったものの、試料像が明瞭でなく、データ測定には至っていない。現在は試料調製条件やタンパク質濃度、塩濃度や凍結条件の改善を行っている。一方、MHFとDNAの複合体の結晶構造解析では位相決定を行い、良好な電子密度が確認できた。電子密度よりタンパク質、DNAそれぞれを配置し、精密化に成功した。FANCM-MHF複合体とDNAとの結晶構造解析を行ったところ、MHF複合体とDNAとほぼ同じ結晶がえられた。これは、初年度に明らかになったようにタンパク質単独のみならず、DNAとの複合体においても有機溶媒と酸化条件下においてFANCMが遊離していた。結晶構造より予測される相互作用に関して、変異体を作成し、その意義を生化学的に明らかにするとともに、他生物種のMHFにおいても同様な複合体形成や相互作用様式を解析している。
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