膜タンパク質であるグルタミン酸輸送体(EAAC1)およびテトラスパニン(CD63)についてクライオ電子顕微鏡を用いた高分解能構造解析を目指して,ヒト細胞を利用した組換えタンパク質として発現・精製を試みた.CD63について,EGFPおよびStrep-Tag融合タンパク質として発現を試みたが,精製することができなかったため,使用するタグをStrep-TagからFLAGタグへと変更し,発現,精製を試みた.発現および精製はAnti-FLAG抗体を用いて行い,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーでは粒子径が想定よりもかなり大きなものであることが示唆された.酢酸ウランを用いたネガティブ染色電子顕微鏡法により粒子の形状を確認したところ,精製したCD63は大きな凝集複合体を形成しているものと考えられた. 一方,EAAC1についてもEGFP融合タンパク質として発現を試みた.C末にFLAG-TagおよびEGFPを結合させることで,EAAC1が正しく膜状に発現,局在している様子が確認できた.また,蛍光顕微鏡観察下において,エクソソームと思われる微小小胞の分泌の様子も確認でき,発現したEAAC1は本来の機能を有している可能性を示唆していた.種々の界面活性剤による可溶化条件ならびに安定性を評価したのち,各種カラムクロマトグラフィーによって精製したEAAC1についてネガティブ染色により粒子像を観察したところ,直径10nm程度の均一な粒子像を得ることができた.濃縮試料をクライオ電子顕微鏡下で観察を行い,一部粒子像を得ることに成功したが,構造解析に必要な粒子数を得るにはいたらなった.これは界面活性剤の影響で試料薄膜の気相界面が保護され,粒子の膜中の分散が低下したためと考えられた.この状況を打破するため,引き続きGraphene膜の利用や界面活性剤の種類,濃度の検討などが必要であると考えられる.
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