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2020 年度 実施状況報告書

NiFe型ヒドロゲナーゼの成熟化における一酸化炭素の輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06517
研究機関大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究

研究代表者

村木 則文  大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 助教 (20723828)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードヒドロゲナーゼ / 金属酵素 / 結晶構造解析
研究実績の概要

NiFe型ヒドロゲナーゼはその名が示すように活性中心にニッケルと鉄からなる二核金属錯体を有している。ニッケルはポリペプチド鎖のシステイン側鎖を配位子としており、鉄はシステイン側鎖に加えて一酸化炭素とシアン化物イオンを配位子としている。申請者らはヒドロゲナーゼの活性中心構築(成熟化)過程において一酸化炭素を生合成する酵素HypXの結晶構造を世界に先駆けて報告した (Muraki et al., Commun. Biol., 2019) 。本研究課題では、HypXによって作られた一酸化炭素がヒドロゲナーゼの活性中心に運ばれるまでの過程を構造生物化学的アプローチで明らかにすることを目指している。
初年度はHypXで生成された一酸化炭素を受け取る2つのタンパク質HypC, HypDに着目した。HypCとHypDは複合体を形成して、鉄錯体を形成するための足場として機能する。申請者は精製用タグを付与しないHypC, HypDを大量発現・大量調製するための系を立ち上げ、それぞれの結晶化と構造解析に成功した。HypXをもたない古細菌由来のHypC, HypDの結晶構造は報告されているが、HypXをもつ好気性菌由来のHypC, HypDの結晶構造は本研究課題の成果が初めての報告となる (論文執筆中) 。
申請者らは、HypCとHypDがHypXと複合体を形成することを明らかにしており、複合体形成が一酸化炭素の効率的な分子間輸送を可能にしているという仮説を立て、その検証を進めている。今年度に決定したHypC, HypDの結晶構造を古細菌型のHypC、HypDと比較することによって、HypC, HypD, HypXの三者複合体における分子間相互作用および一酸化炭素輸送の構造基盤を解明したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

好気性菌由来のHypCとHypDを安定に調製することができた。HypC単体の結晶化に成功して、1.8 angstrom分解能でその結晶構造を決定した。HypCはN末端バレルドメインとC末端ヘリックスがループによって連結された構造をとる。好気性菌由来HypCの結晶構造と古細菌由来HypCの既知構造を重ね合わせるとバレルとヘリックスの相対配置を含め、よく一致していた。ループ領域がフレキシブルであることが示唆されていたが、HypC単体では安定構造が存在することが示唆される。HypCが単体で機能する上で重要な構造基盤であると考えられる。
また、HypD単体の結晶化にも成功して、1.9 angstrom分解能でその結晶構造を決定した。好気性菌由来HypDを古細菌由来HypDと比較すると、一部のドメインの温度因子が高いことや分子表面の静電ポテンシャルの偏りがあることなどの特徴が見出された。これらの特徴はHypXとの複合体形成に関与していると考えている。
各種複合体の結晶化には難航しているものの、初年度において、複合体を形成する単体の構造を決定できたことは十分に評価に値すると思われる。

今後の研究の推進方策

今後は、一酸化炭素の輸送過程において一時的に形成されるであろうHypC-HypD複合体やHypC-HypD-HypX三者複合体の結晶構造解析を目指す。すでに、各複合体を調製して、その結晶化条件スクリーニングを展開しているが、結晶は得られていない。複合体を安定化させる“つなぎ”としての遷移金属イオンの検討やHypDの沈殿を抑制する添加剤の検討なども並行して行い、各複合体の結晶化を第一目標とする。また、X線小角散乱法によって溶液中の複合体構造解析にも取り組む。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Structural Characterization of Y29F Mutant of Thermoglobin from a Hyperthermophilic Bacterium Aquifex aeolicus2021

    • 著者名/発表者名
      Muraki Norifumi、Takeda Kouta、Nam Dayeon、Muraki Megumi、Aono Shigetoshi
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 50 ページ: 603~606

    • DOI

      10.1246/cl.200879

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] X-ray dose-dependent structural changes of the [2Fe-2S] ferredoxin from Chlamydomonas reinhardtii2020

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi Yusuke、Muraki Norifumi、Kiyota Daiki、Okumura Hideo、Baba Seiki、Kawano Yoshiaki、Kumasaka Takashi、Tanaka Hideaki、Kurisu Genji
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 167 ページ: 549~555

    • DOI

      10.1093/jb/mvaa045

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular Mechanism of Heme Transport and Uptake Reaction in Corynebacteria2020

    • 著者名/発表者名
      MURAKI Norifumi
    • 雑誌名

      Nihon Kessho Gakkaishi

      巻: 62 ページ: 78~79

    • DOI

      10.5940/jcrsj.62.78

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ヒドロゲナーゼの活性中心に必要な一酸化炭素が生合成されて輸送される仕組み2021

    • 著者名/発表者名
      村木 則文
    • 学会等名
      第47回生体分子科学討論会
  • [学会発表] 好気性細菌におけるヒドロゲナーゼの金属中心構築の分子機構2021

    • 著者名/発表者名
      村木 則文
    • 学会等名
      第21回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] 水素代謝酵素の活性中心に必須な一酸化炭素を生合成する分子機構2020

    • 著者名/発表者名
      村木 則文
    • 学会等名
      日本農芸化学会 中部支部 第188回例会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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