研究実績の概要 |
NiFe型ヒドロゲナーゼはその名が示すように活性中心にニッケルと鉄からなる二核金属錯体を有している。ニッケルはポリペプチド鎖のシステイン側鎖を配位子としており、鉄はシステイン側鎖に加えて一酸化炭素とシアン化物イオンを配位子としている。申請者らはヒドロゲナーゼの活性中心構築(成熟化)過程において一酸化炭素を生合成する酵素HypXの結晶構造を世界に先駆けて報告した (Muraki et al., Commun. Biol., 2019) 。本研究課題では、HypXによって作られた一酸化炭素がヒドロゲナーゼの活性中心に運ばれるまでの過程を構造生物化学的アプローチで明らかにすることを目指している。 初年度はHypXで生成された一酸化炭素を受け取る2つのタンパク質HypC, HypDに着目した。HypCとHypDは複合体を形成して、鉄錯体を形成するための足場として機能する。申請者は精製用タグを付与しないHypC, HypDを大量発現・大量調製するための系を立ち上げ、それぞれの結晶化と構造解析に成功した。HypXをもたない古細菌由来のHypC, HypDの結晶構造は報告されているが、HypXをもつ好気性菌由来のHypC, HypDの結晶構造は本研究課題の成果が初めての報告となる (論文執筆中) 。 申請者らは、HypCとHypDがHypXと複合体を形成することを明らかにしており、複合体形成が一酸化炭素の効率的な分子間輸送を可能にしているという仮説を立て、その検証を進めている。今年度に決定したHypC, HypDの結晶構造を古細菌型のHypC、HypDと比較することによって、HypC, HypD, HypXの三者複合体における分子間相互作用および一酸化炭素輸送の構造基盤を解明したい。
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