研究課題/領域番号 |
20K06519
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丹羽 達也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (50588530)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質フォールディング / 無細胞タンパク質合成系 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
多くのタンパク質はフォールディングの過程を経て、正しい立体構造をとることで機能を発揮する。しかしフォールディングは物理科学的に非常に複雑な反応であり、現代科学の知識を総動員しても、アミノ酸配列からフォールディングの成否を予測することは未だほとんどできていない。本申請では、無細胞タンパク質合成系を利用して、特定のタンパク質のフォールディングを改善する手法を開発し、それを複数種類のタンパク質に適用することで、フォールディングの原理についての普遍的理解の一助となることを目指している。 フォールディングが改善したタンパク質を検出するために、本申請ではここ10年程度での進展がめざましいナノLC-タンデム質量分析装置を検出系として利用する。本年度ではそのための実験系の構築を開始し、現在もその続きをおこなっている最中である。具体的には、検出系の鍵となるペプチドタグをフォールディング能が既知であるタンパク質の遺伝子に融合させ、その機能評価を行っている最中である。検討の最中で、過去に報告のあるペプチドタグ配列では当グループの装置での検出感度が芳しくないことが判明したため、今後のスループット性の向上も兼ねて、新たに複数種類のペプチドタグを開発し、現在その機能評価を行っているところである。いずれも過去に報告のあるタグと比較して10-100倍程度の感度の向上を確認することができた。今後はこれらのタグが正しく機能するかを確認した上で、特定のタンパク質を対象としたスクリーニングの系の構築に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症への対策のため、本学も年度の初旬は大幅な活動自粛を余儀なくされたため、現状では予定していたよりもやや遅れてしまっている。夏過ぎ頃から実験環境はだいぶ改善されたが、現状においても尚制限等は少し残っており、その中でいかに効率よく実験を進めていくかを今後考えていかなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」項で述べたとおり、新規のペプチドタグ配列を見出すことができたため、まずは早急にこのタグが機能することを確認する。その後、できるだけ早くモデルとなるタンパク質(過去に実績のあるUlaFを予定している)について、ランダム変異ライブラリを構築してスクリーニングを行ってみたい。実際にスクリーニングを行ってみることで、実験装置や条件等の問題点が浮かび上がってくると思われるので、今年度はその最適化に注力し、できるだけ早く系の構築を完了させることを目標として研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が2万円ほど生じてしまっているが、全体としての予算消化はほぼ当初の計画通りに進めることができている。差額が生じた主な原因は、年度末に用いる予定であった物品が年度末に在庫を確保することができず(3/31までの納品に間に合わなかった)、次年度に購入せざるを得ないというものがいくつか生じたためである。
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