研究課題/領域番号 |
20K06524
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
永田 崇 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10415250)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アミロイドβ / プリオン / アプタマー / NMR / AFM |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病患者の脳にはアミロイドβペプチド(Aβ)からなる繊維が蓄積する。一方、繊維となったAβではなく、溶解性のAβが記憶・学習障害の責任であると考えられるようになった。また、溶解性Aβが神経細胞表面に提示されたプリオン蛋白質(PrPC)に結合し、記憶・学習障害に関わるシグナルを伝達することが示唆されている。我々はこれまでに、Aβの繊維化を抑制するペプチドとPrPCに強く結合する抗PrPC RNAアプタマーを見出しており、本研究ではこれらを使って、溶解性AβとPrPCとの複合体およびAβ繊維の形成原理を解明するとともに、治療への分子基盤を確立することを目指している。今年度は、溶解性Aβと我々が見出した抗PrPC RNAアプタマーのシナプス可塑性に対する影響を調べることを目指した。溶解性Aβと抗PrPC RNAアプタマーを各々、もしくは順次マウスの海馬薄切片に投与した後、電気刺激を与え応答を観測する実験を行った。まず、溶解性Aβは調製方法によって性質が異なることがわかったため、この実験に適した溶解性Aβの調製方法の確立を行った。また、可塑性を計測する実験プロトコルの整備を行った。目下計測を繰返し傾向を調べているところであり、溶解性Aβがシナプス可塑性を減弱させること、抗PrPC RNAアプタマーがこの減弱を回復させることが示されつつある。 一方、以前抗PrPC RNAアプタマーを得る上で培った技術や、NMR解析した技術やノウハウを活用し、未だ解決していない遺伝子複製の分子機構の研究を行い(雑誌論文、学会発表)、また、ヒト免疫不全ウイルスに対する創薬に関する研究も行った(学会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、溶解性Aβと我々が見出した抗PrPC RNAアプタマーのシナプス可塑性に対する影響を調べることを目指した。溶解性Aβと抗PrPC RNAアプタマーを各々、もしくは順次マウスの海馬薄切片に投与した後、電気刺激を与え応答を観測する実験を行った。まず、この実験に適した溶解性Aβの調製方法を確立するとともに、実験プロトコルの整備を行った。その結果、溶解性Aβがシナプス可塑性を減弱させること、抗PrPC RNAアプタマーがこの減弱を回復させることが示されつつある。 一方、以前抗PrPC RNAアプタマーを得る上で培った技術や、NMR解析した技術やノウハウを活用し、未だ解決していない遺伝子複製の分子機構の研究を行い(雑誌論文、学会発表)、また、ヒト免疫不全ウイルスに対する創薬に関する研究も行った(学会発表)。
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今後の研究の推進方策 |
溶解性Aβと繊維化抑制ペプチドの分子間結合、構造、分子運動など、分子レベル、原子レベルの解析について進めていく。また、蛍光標識、免疫染色などにより、溶解性Aβ、PrPC、抗PrPC RNAアプタマーの海馬薄切片における局在性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
溶解性Aβと繊維化抑制ペプチドの分子間結合、構造、分子運動など、分子レベル、原子レベルの解析を行うため、NMR及びAFM実験に必要な試薬を購入する。
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