研究課題/領域番号 |
20K06525
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大橋 祐美子 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(RPD) (10422669)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 液-液相分離 / アミロイド線維 / 天然変性蛋白質 |
研究実績の概要 |
細胞内には、液-液相分離によって形成される液滴が無数に存在し、その役割は多岐にわたる。液-液相分離の制御メカニズムの解明は、今後の創薬研究の発展に重要であるが、詳細な分子機構は未解明である。本研究は、4種の酵母Saccharomyces cerevisiae(SC)、Kluyveromyces lactis(KL)、Candida albicans(CA)、Schizosaccharomyces pombe(SP) 由来の翻訳終止因子Sup35のN末端天然変性領域(Sup35NM)を用い、液-液相分離のメカニズムの明らかにすることを目的としている。 これまでの研究で、出芽酵母SC, KL, CA由来のSup35NMは、液-液相分離において高い温度感受性を示す一方、分裂酵母SP由来のSup35NMは、液-液相分離において、温度感受性が低い事を発見した。 3年目の研究では、それら4種のSup35NMの混合することで起こる現象を観察した。細胞内の液-液相分離では、多数の生体分子が共に相分離しており、そこには類似した配列を持つ蛋白質が複数含まれている。Sup35NMを混合する事で、生体内の液-液相分離に近い環境を作り出し、その影響を観察するのが目的である。 先ずはこれら4種のSup35NMを混合した時、それらは混合状態で液滴を形成できる事を発見した。配列は異なるものの、アミノ酸組成が類似していれば、共に液滴を形成する事が示された。また、出芽酵母由来のSup35NMはアミロイド形成蛋白質として知られているが、複数のSup35NMを混合する事でそのアミロイド形成に顕著な遅延が見られた。これは複数の相同蛋白質との相互作用が、アミロイド核形成を阻害する事が原因と考えられ、同様の仕組みが細胞内の液-液相分離にも存在すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初では予定していなかったものだが、アミロイド形成遅延の現象を発見し、細胞内の液-液相分離に共通して備わるアミロイド形成抑制のシステムが明らかになろうとしている。研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でSC-Sup35NM、KL-Sup35NM、CA-Sup35NM、SP-Sup35NMの精製蛋白質を用いた、生体外での液-液相分離特性が明らかになってきた。今後は酵母細胞内でのSup35NM相分離に関する研究を中心に進めていきたい。これまでの研究で調べていた環境応答性や、アミロイドとの繋がりが生体内でも見られるのか、もしくは他の生体分子の影響で異なる性質を持つのかを探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は多くの実験器具類が品薄となっており、希望する物品が買えない事が続いた事が原因である。次年度は酵母を用いた研究に移行する予定であり、新たに試薬類や器具類を揃えるため、そこに使用する。
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