細胞内には、液-液相分離によって形成される生体分子の液滴が無数に存在する。その役割は多岐にわたり、生命維持には欠かせないものである事が分かってきた。その一方で、液滴がアミロイド等の疾患に関与する異常凝集形成の引き金になる事が、複数の蛋白質において、試験管内の実験で示されている。しかし細胞内ではほとんど再現されておらず、細胞内ではアミロイド形成抑制の機構が存在すると考えられる。 そこで我々は、4種の酵母Saccharomyces cerevisiae(SC)、Kluyveromyces lactis(KL)、Candida albicans(CA)、Schizosaccharomyces pombe(SP) 由来の、翻訳終結因子Sup35のN末端天然変性領域(Sup35NM)を用いて、細胞内液滴の環境に近い、複数の蛋白質が存在する系を試験管内で構築し、液滴からのアミロイド形成抑制のメカニズムの解明を目指す研究を行った。 これまでの研究で、異種酵母由来の4種のSup35NMを混合することでそれらは液滴内で共存できる事が分かった。また、4種のうち3種のSup35NMでは液滴からの自発的アミロイド形成が見られるが、液滴内に共存する事によってアミロイド形成が遅延する事が明らかとなった。 昨年度までの研究結果を受け、実際の細胞内液滴でも、アミノ酸組成の類似したタンパク質が共存し、疾患へつながるアミロイド形成を抑制していると考え、酵母細胞内液滴でSup35とアミノ酸組成の類似したタンパク質との共存を確認した。結果、複数のタンパク質において、細胞内液滴での共局在を確認する事が出来た。今後、これらのタンパク質の役割を調べ、細胞内でのアミロイド抑制の仕組みを明らかにしたい。
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