研究課題/領域番号 |
20K06527
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
小田 隆 立教大学, 理学部, 助教 (00573164)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天然変性 / X線小角散乱 / NMR / 高速AFM / 分子動力学計算 |
研究実績の概要 |
本研究では、2つの生物種間(T.kodakaraensisとP.furiosus : 以下Tko、Pfuと略記)で天然変性領域(IDR)のアミノ酸配列が著しく異なるがDNAクランプのスライド抑制という共通の機能を持つHefタンパク質に着目し、その構造的な共通性を複数の構造生物学的手法によって明らかにし、天然変性タンパク質の機能発現に普遍的な原理の解明を目指す。2020年度はコロナ禍の影響もあり、予定していた学外の放射光実験施設利用や共同研究者との実験、解析に制限があったが、X線小角散乱実験、高速AFM観察については一部予備的実験を実施することができた。TkoHefIDRについてはX線小角散乱解析によるアンサンブル構造モデル構築をすでに実施済みであるため、CDスペクトルでN末端側の二次構造の特徴を解析し、アンサンブル構造と二次構造に基づいたN末端側の変異体を複数作製して、生化学実験により構造と機能の評価を行った。また変異体によるDNAクランプのスライド抑制能評価を高速AFMによる1分子観察で行うために、予備的な観察により条件検討を行った。PfuHefIDRについてはX線小角散乱実験を予備的に実施し、現在アンサンブル構造モデル構築に向けたデータ解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ禍の影響で、学外施設の利用制限・国内の移動の制限があった。本研究では複数の構造生物学的手法(X線小角散乱、高速AFM、NMR、および分子動力学計算)により2つの生物種由来の天然変性領域の構造的特徴の共通性と機能発現の原理の解明を目指しているが、構造生物学的手法のほとんどは学外施設(放射光施設)や学外の共同研究者との実験が必要であるため大きな制限を受けた。しかしオンラインを活用した入念な打ち合わせやリモート実験等により、前述の通り一部の構造生物学的解析については予備的にだが実施することができた。また、変異体を用いた生化学実験による機能評価については2020年度後半からはそれほど大きく影響を受けることなく実験を進展させることができたため、全体としては概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施できたX線小角散乱解析、高速AFM観察について実験データの解析を進める。TkoHefIDRについては、高速AFM観察データの解析を進めるが、これまでのところ、観察条件の最適化がまだ不十分という感触を得ているため、2021年度は観察条件の見直しも含めて実験を進める。またTkoHefIDRについては、変異体の生化学的解析を2020年度に実施したため、2021年度は追加の生化学実験を行い、これまでに得られているTkoHefIDRの構造学的特徴との構造機能相関を解析する。PfuHefIDRについては2020年度に実施したX線小角散乱解析データに基づいてDNAとDNAクランプとの複合体のアンサンブルモデル構築を進め、DNAクランプのスライド抑制に関わるIDRの構造的特徴の解析を進め、変異体作製の候補残基を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍の影響で、学外施設の利用や学外共同研究者との共同研究が制限を受け、オンライン会議、リモート実験などに切り替えた。このため当初予定していた旅費のほとんどと、学外での実験に使用する消耗品などの物品費のほとんどを使用できず、次年度に使用することになった。大学の一時閉鎖等のため当初予定していた実験装置、実験器具などの備品、その他消耗品の購入は、選定・見積もりに遅れが生じたことと、実験計画変更のため、次年度購入が妥当と考えた。
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