グレリンは、28個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、GHSR(成長ホルモン分泌促進受容体、現在はグレリン受容体)の内因性リガンドとして胃で発見された。 グレリンの特徴として、Ser3でO-アシル修飾されていることが挙げられ、この修飾はグレリンの活性に必須である。このようなアシル修飾を活性に必要とするペプチドホルモンは他に知られていない。しかし、グレリン受容体の構造情報が少ないため、アシル修飾グレリンによる活性化の正確なメカニズムは解明されていなかった。 われわれは本研究期間中に、拮抗薬を結合させたグレリン受容体の初の高分解能結晶構造を報告した。その結果、グレリン受容体はTM6束とTM7束の間に広いギャップ構造(クレバス)を持ち、このギャップ構造にはフェニルアラニン残基を含む疎水性アミノ酸が豊富に含まれていることがわかった。グレリン受容体のギャップ構造はTM6とTM7で構成されており、その動きによってGPCRのコンフォメーションが活性型に変化すると考えられている。従って、このギャップ構造とグレリンのアシル酸部分との相互作用が、グレリン受容体を活性型に変化させることに関与していると考えられる。グレリン受容体の活性化機構を解明するためには、アシル修飾グレリンと結合した活性型グレリン受容体の構造解析によるさらなる詳細が必要である。 そのため、次にわれわれはグレリンそのものが結合した状態の活性型グレリン受容体の構造解析に取り組んだ。しかし残念ながら我々の不活性型グレリン受容体の構造解明の1年後に3つの研究グループにより、グレリンが結合した活性型グレリン受容体の構造が解明され論文発表された。われわれはその後、がん悪液質治療薬のアナモレリンが結合した構造解析に取り組み、成功した。現在、発表論文を準備中である。
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