研究課題/領域番号 |
20K06539
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長束 俊治 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00243163)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖ペプチド / 希少糖 / ゼブラフィッシュ / 孵化腺 |
研究実績の概要 |
6-デオキシアルトロース(6dAlt)を糖鎖の末端に持つ糖タンパク質のタンパク質部分を解析することで、2種類のタンパク質を同定できた。1つはヒト癌胎児性抗原のホモローグであるゼブラフィッシュのタンパク質であった。この糖タンパク質はヒトでは腸の上皮細胞表面に発現しておりその糖鎖部分と微生物の相互作用を利用して、病原微生物の排除に関与することが知られている。ゼブラフィッシュでは6dAlt含有糖ペプチドが胚体外へ分泌されていることを我々は既に明らかにしているので、やはり病原微生物との相互作用に関与している可能性が考えられる。一方、もう一つの同定糖タンパク質は、プロテアーゼの一つであるカテプシンの一種であった。ゼブラフィッシュの当該プロテアーゼは、孵化腺特異的に発現して分泌されており、孵化に関与すると考えられている。このことは6dAltが、分泌糖ペプチドに含まれることや受精時には検出されず孵化時期に向かって検出量が増加することと非常によく一致している。また、その糖鎖の付加部位は、活性化によってプロテアーゼドメインから切り取られる不活化ペプチド内に位置していた。このことはこの部分が、プロテアーゼ前駆体の不活化だけでなく、切り離されてからも何らかの機能を有することを示唆するものである。以上の2つの糖タンパク質を同定できたことにより、6dAlt含有糖ペプチドの機能として、微生物との相互作用が考えられた。これは今後のゲノム編集を用いた6dAlt含有糖鎖の欠失実験における表現型の変化観察のための重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では目的を、分子構造解析実験による6-デオキシアルトロース(6dAlt)を糖鎖の末端に持つ糖タンパク質のタンパク質部分の同定と、遺伝子改変実験による6dAlt含有糖ペプチドの機能解析の2段階に分けて行う計画である。そのうち前者の目的を1年目の途中で既に達成でき、現在は、遺伝子改変個体の解析に向けて6dAlt含有糖鎖の消失を簡便に検出する方法の構築を行っている。以上のことから、本研究は当初の計画よりも進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変ゼブラフィッシュ胚の解析のためには、まず6dAlt含有糖鎖の消失を簡便にスクリーニングできねばならない。この目的のために現在その分析法を構築中である。スクリーニング法が構築できれば、次にゲノム編集による遺伝子改変を行う。1年目の研究で同定した2種類のタンパク質遺伝子に加え、6dAlt合成酵素の候補遺伝子をターゲットとする。以上の研究により6dAlt含有糖ペプチドの生理的機能の解明を目指す。
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