6dAltを糖鎖の末端に持つ2つの糖タンパク質を同定できた。1つはヒト癌胎児性抗原のホモローグであり、ヒトでは腸の上皮細胞表面に発現しておりその糖鎖部分と微生物の相互作用を利用して病原微生物の排除に関与することが知られている。もう一つは、カテプシンLbであり、ゼブラフィッシュの当該プロテアーゼは、孵化腺特異的に発現して分泌され、孵化に関与すると考えられている。このことは6dAltが、分泌糖ペプチドに含まれることや受精時には検出されず孵化時期に向かって検出量が増加することと非常によく一致している。また当該糖鎖は、活性化によってプロテアーゼドメインから切り取られる不活化ペプチド内に結合していた。このことはこの部分が、切り離されてからも何らかの機能を有することを示唆するものである。これは今後のゲノム編集を用いた6dAlt含有糖鎖の欠失実験における機能解析のための重要な知見となる。さらに6dAltを含むO-型糖タンパク質の探索を行った。糖鎖を多数持つムチン様タンパク質は、プロテアーゼの消化を受けにくく適当なペプチド長を持つ糖ペプチドを得ることが難しい。これに対して、プロナーゼとプロテイナーゼKのダブルダイジェストにより解析可能なO-型糖ペプチドの調製を試みたところ、6dAltを含むO-型糖ペプチドを検出でき、アミノ酸配列を決定することができた。しかしながらペプチド部分が5アミノ酸であり、データベースでタンパク質を特定するには至らなかった。また、遺伝子欠失による6dAlt合成遺伝子の特定のために、6dAlt含有糖鎖を少ない個体数から簡便に検出する手法の開発を前年度に引き続き行った。その結果、受精後36-72時間胚10個体の培養上清から、定量的に6dAlt含有オリゴ糖を解析する手法を確立できた。これにより、遺伝子欠失による6dAlt合成遺伝子特定のための実験が行えるようになった。
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