研究課題/領域番号 |
20K06541
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
大畑 樹也 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80616459)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | cis-NATs / EMT / TGF-beta / Epigenetics / Program |
研究実績の概要 |
TGFb(Transforming Growth Factor b)は腫瘍抑制作用と腫瘍促進作用の二面性を持つ増殖因子である。このためTGFbの生理作用は多彩であり、増殖抑制作用、アポトーシス誘導、EMT(Epithelial-Mesenchymal transition, 上皮間葉転換)誘導などが知られる。EMTは正常発生、傷の治癒、がんの転移などに関わることが知られる。 cis-NATs(cis-Natural Antisense Transcripts)とは、センス鎖(パートナー遺伝子)と同じ領域から転写される逆方向の転写産物である。申請者はcis-NATsのパラダイムであるTsixの分子機構について独自の研究を進めてきた。Tsixの様に、一部のcis-NATsはそのパートナーの転写をエピジェネティックにかつ恒常的に抑制する潜在能力を持つと思われる。しかしながら、数多くのcis-NATsの潜在能力は依然不明なままである。 本提案では、TGFb応答の研究領域とcis-NATsの研究領域を融合し、TGFb応答遺伝子のcis-NATsを①体系的に探索・編纂し、その②生理的機能解明、および③分子機構解明を目標としている。 本年度は、TGFb応答遺伝子のcis-NATsの体系的な探索・編纂を行うために、独自のプログラムCCIVRを開発した。独自のRNA-seq dataをCCIVR解析することにより、TGFb応答し、さらに逆相関の発現パターンを示すcis-NATs群を網羅的に同定することに成功した。さらにqRT-PCRやChIP-PCR法を組み合わせ、それらcis-NATsの中でTsixと同様の発現制御機構を持つ複数のcis-NATs pairsを同定することに成功した。この成果を論文としてまとめ投稿、現在査読中である(Ohhata T et al., under review)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、TGFb応答遺伝子のcis-NATsの体系的な探索・編纂を行うために、独自のプログラムCCIVRを開発した。独自のRNA-seq dataをCCIVR解析することにより、TGFb応答し、さらに逆相関の発現パターンを示すcis-NATs群を網羅的に同定することに成功した。さらにqRT-PCRやChIP-PCR法を組み合わせ、それらcis-NATsの中でTsixと同様の発現制御機構を持つ複数のcis-NATs pairsを同定することに成功した。 また、CCIVRを用いて11種類の実験動物よりcis-NATs pairを網羅的に同定し、その進化的な意義を解析した。さらに、既報のParthenogenetic/Androgenetic ESCsのRNA-seq dataを用いて、母/父由来遺伝子間で発現にバイアスのある、逆相関発現を示すcis-NATs群を網羅的に同定した。その多くが新規遺伝子群であったが、既報のインプリンティング遺伝子も含まれており、本解析が正しく行われていることが裏付けられた。 これらの成果を論文としてまとめ投稿、現在査読中である(Ohhata T et al., under review)。これは当初の計画(TGFb応答遺伝子のcis-NATs解析)以上に本研究が広がりを見せていることを示しており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
数多くのcis-NATsの潜在能力は依然不明なままである。CCIVRは既報のRNA-seq dataから、発現情報を維持したまま網羅的にcis-NATs pairsを同定できる独自のプログラムである。これを用いれば、疾患のRNA-seq dataから異常な発現変化を示すcis-NATs群や、発生・分化に関与するcis-NATs群の候補を網羅的に抽出することができる。今後はこれらの方向性で研究の幅を広げるとともに、投稿中論文のリバイス実験を全力で取り込み、研究期間中の論文アクセプトを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)この年度に行う予定であったRNA-seqやChIP-seqといった大規模実験を行わなかったため。 (使用計画)それら大規模実験はリバイス実験で指摘される可能性がある。それに対応するために、繰越予算を使用したい。
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