2023年度は本研究で確立したin vivoのCORの活性評価系を利用し下記の通り、二つの異なる活性を持つCORの機能変換のメカニズムについて解析を行った。 CORはchlorophyllide(Chlide) aのB環の炭素二重結合を還元しバクテリオクロロフィリド(Bchl) aへ変換する反応を触媒する。しかしBchl bを主要色素として保持する光合成細菌Blastochloris viridisの保有するCORはB環の二重結合の還元ではなく、8V-Chlide aに対してエチリデン基の生成を行う。このように同じCORでも種によって異なる活性を有することが報告されているが、どのような違いによりこの活性の違いが決定づけられているかは不明である。この活性の違いを決定づけるアミノ酸残基を特定するため、COR欠損株を用いたin vivo活性評価を利用してそのアミノ酸残基の特定を行った。COR欠損株にB. viridisのCOR遺伝子bchY-Zを導入した株は光合成的には生育しないが、長期の培養により光合成的に生育するリバータントを取得した。得られたリバータントにおけるbchY-Z配列を確認したところ、いくつかのアミノ酸置換を伴う塩基置換が起こっていることがわかった。その中でも最も相補効果が大きいと判断されたBchYのP189S変異に着目して、そのリバータントが持つ色素の解析、COR_P189Sの活性の変化を解析した。その結果、COR_P189Sは元来のエチリデン基生成活性を維持しつつ、Bchlide aへの活性を獲得していることを見出した。構造予測から推測される変異箇所から金属中心の構造に変化をもたらしこのような活性の変化が生じたと考えられる。
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