研究課題/領域番号 |
20K06544
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西 毅 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60403002)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | スフィンゴシン1リン酸 / 輸送体 / リゾリン脂質 / シグナル伝達 / 構造機能相関 / S1P |
研究実績の概要 |
リゾリン脂質は細胞間の情報伝達物質であることが明らかとなり、例えばその1つであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)シグナリングは免疫応答、血管形成、骨形成、がん細胞転移など様々な重要な役割を担うことがわかってきている。さらに、S1P受容体を標的とする創薬で多発性硬化症の治療に用いられる薬が見出されている。本研究では細胞間の情報伝達物質として機能するリゾリン脂質のシグナル伝達機構において、細胞膜を介し細胞の内外へリゾリン脂質を動かす輸送体がどのような役割と機能になっているのかを明らかにすることを目的としている。その中でS1P輸送体として申請者らが見出したSPNS2とMFSD2BによるS1Pの輸送がどのような機構で行われ、受容体を活性化してシグナルを伝達するのか、その分子機構を明らかにすべく研究を進めた。これまでにS1P輸送体であるSPNS2のS1P輸送機構を明らかにするため、部位特異的変異導入を進めることで、S1P輸送に必須なアミノ酸残基と基質認識に関わるアミノ酸残基を新たに複数残基見出した。すでに構造がわかっているMFS型輸送体の結晶構造を用いてSPNS2の構造を予測し、同定した機能に関与する残基の高次構造上の配置を参考にし、S1P輸送機構について推定した。 また、これらのいくつかの変異体では細胞内での局在や発現量が変化すること見出し、活性以外に関与する残基を同定することに成功した。 輸送体の高次構造を明らかにするためにタンパク質の大量発現系と精製法の検討を進め、タンパク質を大量調製できる条件を検討した。大量調製したタンパク質で結晶構造解析に使用可能なサンプルの作成を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輸送体の機能を明らかにするために変異導入を進めることで、活性だけではなく細胞内局在や細胞内での安定性に関与する残基を同定することに成功するとともに、高次構造モデルから輸送機構の解明につながる知見が得られつつある。シグナル伝達や高次構造に関しては条件を検討しつつゆっくりであるが着実に前進していると考えている。ただ、コロナウイルス感染症の影響で研究を実施できない期間や雇用予定であった研究補佐員の雇用などが予定通りには進まなかったため当初の予定通りには研究が進められなかった部分もある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに明らかにしているSPNS2の輸送機構に加えMFSD2BのS1P輸送機構に必須な残基の同定など新たな必須残基の探索を進めることで、SPNS2とMFSD2Bという異なるS1P輸送体によるS1P輸送機構について明らかにする。また活性以外での局在、安定性などのきんぷ制御機構に関してもさらに解明を進める。高次構造の決定を目指して、SPNS2およびMFSD2Bの大腸菌もしくは培養細胞での大量発現系の構築と最適化をさらに進めるとともに、タンパク質の精製、結晶化条件の最適化を進め高次構造の決定を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響で研究を実施できない期間や雇用予定であった研究補佐員の雇用などが予定通りには進まなかったため当初の予定通りには研究が進められなかった部分が生じたため。
|