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2020 年度 実施状況報告書

DNA複製により起動する選択的タンパク質分解によるゲノム維持機構

研究課題

研究課題/領域番号 20K06547
研究機関兵庫県立大学

研究代表者

西谷 秀男  兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (40253455)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードゲノム / DNA複製 / タンパク質分解 / PCNA / Cdt2 / リン酸化
研究実績の概要

生命の連続性は、ゲノム情報の正確な維持継承により成り立つ。細胞周期において染色体
の複製は一度だけに限定される。この制御に、PCNAに依存したCRL4-Cdt2ユビキチンリガー
ゼによるタンパク質分解が重要な働きをする。PCANは複製が始まりDNAにロードされると、
染色体複製に関わる多数の因子が結合する足場となり、それらの働きを補佐する。PCNAの新たな機能として、DNA複製のライセンス化因子Cdt1が結合すると、CRL4-Cdt2によるCdt1のポリユビキチン化を介した分解を引き起こし、再複製を抑制することが分かってきた。また、紫外線などによるDNA損傷時にも同様に作動し、ゲノム維持に必須の機能を果たす。本研究では、CRL4-Cdt2がどのようにして、複製が開始してPCNAがクロマチンに結合した時のみ分解を引き起こすのか、そして、細胞周期の進行に伴いどのようにその活性が制御されるのか、に焦点を当てその仕組みの解析を進めている。
本年度の成果として、1)レーザーによるDNA損傷を誘発後、ライブイメージング法でmCherry-Cdt2の損傷部位への集積キネティクスを解析する方法を導入した。DNA損傷部位にmCherry-Cdt2が数分後に集積する様子を観察した。2)Cdt2のCDK-サイクリンによるどのリン酸化がPCNAとの結合を抑制するか調べるため、Cdt2-C末端(390-730)で確認した。この領域のCDKリン酸化部位18変異でもWTに比べて、PCNAとの結合が増強していることを確かめた。3)Cdt2C末の(460-580)にDNA結合活性があることを報告したが、さらに限定するために、塩基性アミノ酸に富む前半と、後半側に分けてタンパク質を精製したところ、両領域とも結合能を消失していたので、(460-580)全体か、分割した領域に結合能があると判断した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

次にまとめるように、一定の成果が得られている。
1)手間のかかる精製タンパク質を用いたDNAにロードされたPCNAとのCRL4-Cdt2の結合を調べる方法として、レーザーによるDNA損傷を誘発後、mCherry-Cdt2の損傷部位への集積キネティクスをライブイメージング法で解析する方法を導入した。DNA損傷部位にmCherry-Cdt2が数分後に集積する様子を観察した。この方法により、今後各種変異Cdt2を作成して解析を進めることが可能となった。
2)Cdt2C末の(460-580)にDNA結合活性があることを報告したが、さらに限定するために、塩基性アミノ酸に富む前半と、後半側に分けてタンパク質を精製したところ、両領域とも結合能を消失していたので、(460-580)全体か、分割した領域に結合能があると判断した。
3)Cdt2のCDK-サイクリンによるリン酸化がPCNAとの結合にネガティブに働くことを報告したが、どの領域のリン酸化が抑制効果を持つのか不明なため、Cdt2-C末端(390-730)でのみ効果があるのかどうか確認した。CDKリン酸化部位18変異でもWTに比べて、リン酸化が低下し、PCNAとの結合が増強していることを確かめた。また、論文にて報告された網羅的なタンパク質のリン酸化解析データをもとに、実際にリン酸化が検出されているCdt2の6部位に変異を導入した発現プラスミドを構築した。安定発現細胞の構築を進めている。

今後の研究の推進方策

1)mCherryと融合したCdt2のN末のみ、PIPbox、DNA結合部位、あるいはCDKリン酸化18部位の変異体を作成し、ライブイメージングにて、DNA集積キネティクスを調べる。細胞周期での違いがないか比較する。
2)論文にて報告されたCdt2のリン酸化部位のうちCDKリン酸化部位に対応する6箇所をアラニンに変異したCdt2を作成したので、安定発現細胞を調整したのち、PCNAとの結合を免疫染色および免疫沈降により確認する。効果があれば、さらにリン酸化部位を絞っていく。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
講座費による消耗品の購入が可能となり、また学会がwebにより実施されたため参加旅費が不要となり、未使用が発生した。
(使用計画)
本年度分の研究費と合わせて、研究の遂行のため適切に使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] CRL4(Cdt2): Coupling Genome Stability to Ubiquitination2020

    • 著者名/発表者名
      Panagopoulos A, Taraviras S, Nishitani H, Lygerou Z.
    • 雑誌名

      Trends Cell Biol.

      巻: 30 ページ: 290-302

    • DOI

      10.1016/j.tcb.2020.01.005.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] DNA損傷修復において機能するCRL4-Cdt2ユビキチンリガーゼの損傷部位集積機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      海老原渓、日下部将之、林晃世、塩見泰史、菅澤薫、西谷秀男
    • 学会等名
      第38回染色体ワークショップ・第19回核ダイナミクス研究会
  • [学会発表] DNA再複製誘導による過剰な複製の開始タイミングの解析2020

    • 著者名/発表者名
      渡邊 雄一郎、林 晃世、高原 教代、塩見 泰史、西谷 秀男
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [備考] 兵庫県立大学 大学院理学研究科 生体情報学II

    • URL

      https://www.sci.u-hyogo.ac.jp/edu/kenkyuu/base23.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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