これまでの抗真菌薬は、ヒトと同じ真核細胞という制約から、真菌に特有な細胞壁β-1,3グルカン、細胞膜エルゴステロール合成酵素の阻害薬、あるいはピリミジン系核酸合成阻害薬という状況で、抗菌薬や抗ウイルス薬の開発とは異なり、抗真菌薬の標的部位は極めて限定された状況にある。したがって、真菌の病原性獲得といった新しい視点から、シグナル伝達系に創薬標的を求める探索研究は、ユニークなアプローチであり、これまでにない新たな発見を生み出せるものと考えられる。菌糸成長を標的として、同定したRacやCDC42の周辺分子を阻害する低分子化合物は新規作用標的を有する抗真菌薬のリード化合物となるものと期待される。
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