研究課題
超高齢社会を迎えた本邦において、健康寿命の延伸は達成すべき重要な課題であり、その実現には自立性の低下を誘引する運動器症候群の克服が不可欠である。その代表的疾患である骨粗鬆症およびサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の発症要因は、概して加齢に伴う組織リモデリング機構の破綻であると捉えることができるが、破綻を招く分子基盤の実体は不明である。これまでに申請者らは、細胞周囲の微細環境を形づくるコンドロイチン硫酸(CS)鎖が、骨・骨格筋・神経といった運動器を支える構成要素の分化・再生過程を調節する多機能糖鎖であることを明らかにしてきた。本研究では、CS鎖の発現が加齢に伴い減少することを踏まえ、「運動器全般の正常な組織リモデリング機構が機能的CS鎖の発現により担保されている」という仮説を実証すべく、骨および骨格筋を基軸にした運動器の組織リモデリング過程におけるCS鎖の役割と作用機序の包括的解明を目指し、本年度については、以下の成果を得た。1)“CS-E”タイプのCS鎖による破骨細胞分化抑制の作用機序の解析:前年度に引き続き、CS-Eの作用点を探索したところ、新たにCS-Eを認識する受容体分子を介する経路を見出した。この経路は、細胞内でRANKL誘導性の破骨細胞分化シグナルをブロックすることも判明したことから、CS-Eの主要な作用点であると考えられた。2)骨格筋幹細胞である筋サテライト細胞に依存した骨格筋再生過程に影響を及ぼすCSサブタイプの役割とその作用機序の解析:前年度の結果を踏まえ、若齢マウスの骨格筋に検出される特徴的なCS鎖を過剰発現する遺伝子改変マウスの解析を重点的に行った結果、Wntシグナルをはじめ筋老化の指標となるパラメータが、野生型マウスに比べ低値を示すことが判明した。したがって、骨格筋におけるCS鎖の硫酸化バランス制御が筋サテライト細胞を介した骨格筋の再生や機能維持に重要であるとこが示唆された。
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