研究課題/領域番号 |
20K06559
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
佐藤 孝哉 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20251655)
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研究分担者 |
竹中 延之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20610504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インスリン / 白色脂肪細胞 / 糖取り込み / 脂肪生成酵素 |
研究実績の概要 |
本年度は、脂肪細胞特異的rac1ノックアウト(adipo-rac1-KO)マウスの表現型とそのメカニズムの詳細な解析を行った。adipo-rac1-KOマウスの摂餌量や体重は、野生型マウスの場合と比較して、いずれも有意差が認められなかった。一方、adipo-rac1-KOマウスでは、耐糖能の低下が認められた。さらに、皮下白色脂肪組織、生殖腺周辺白色脂肪組織のいずれも、adipo-rac1-KOマウスにおいて、萎縮と組織重量の低下が観察され、両組織の白色脂肪細胞は有意に縮小していた。これまでの培養細胞株を用いた研究から、Rac1が脂肪細胞への糖取り込みを制御していることが明らかにされているので、白色脂肪細胞におけるRac1の欠損が糖取り込みの低下を引き起こし、上記の表現型が引き起こされる可能性が考えられる。そこで、単離した白色脂肪細胞において、インスリン刺激、恒常的活性型ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)や恒常的活性型タンパク質キナーゼAkt2の発現による糖取り込みを定量したところ、adipo-rac1-KOマウス由来の白色脂肪細胞では、顕著な低下が認められた。また、上記の刺激に応答した糖輸送担体GLUT4の細胞膜への移行を観察したところ、糖取り込み量と同様に、adipo-rac1-KOマウス由来の白色脂肪細胞では、顕著な低下が認められた。さらに、上記の刺激に応答したRasファミリーGTPアーゼであるRalAの活性化も、adipo-rac1-KOマウス由来の白色脂肪細胞では阻害されていた。一方、各種脂肪生成酵素の発現も、adipo-rac1-KOマウス由来の白色脂肪細胞では低下していた。以上の結果より、Rac1は、糖取り込みと脂肪合成系の制御に重要な役割を果たしており、その欠損により脂肪細胞の縮小化と脂肪組織の萎縮が引き起こされることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子組み換えマウスの作成方法や基本的な測定系は、既に確立されていたので、想定通りに、本研究に応用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに研究を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
白色脂肪細胞の分化誘導におけるRac1の機能の解明ならびにadipo-rac1-KOマウスの表現型とそのメカニズムのさらなる解析を2022年度にわたって進める計画となったため。
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