研究実績の概要 |
本年度は微生物の増殖機構に関する解説記事を執筆し、昨年度に報告した一本鎖DNA上での出芽酵母ORCの機能構造分化と制御(Kawakami et al., 2019, Genes Cells)を更に発展させた。ORCは複製起点DNA二重鎖らせんの認識に必須な蛋白複合体であり、我々が最大サブユニットOrc1内に見いだしたモチーフeukaryotic origin sensor (EOS)は、基質DNAが二重らせんか一本鎖かによってORCの機能構造分化をもたらす(Kawakami et al., 2015, Sci. Rep.; Kawakami et al., 2019)。細胞内には一本鎖DNAを含め、二重らせんよりも高リスクとされる種々の非典型DNA構造が存在する。 そこで、非典型DNA構造のORC制御における役割を解析するため、我々は非典型DNAとORCとの結合能を精製蛋白質を用いた試験管内再構成系(Kawakami et al., 2015他)で詳細に解析した。その結果、従来非特異的とされていた非典型DNAとORCとの結合能がより特異性を持つことを示唆する知見を得た。我々の情報解析では非典型DNAとORCとが特異的なゲノム部位で結合することを示唆しており(Kawakami et al., 2019)、今回の生化学的知見は上述の我々の報告とよく整合している(論文執筆中)。 次に、解析対象となる非典型DNAの種類やORCサブユニットを拡張した解析も進めた。我々はORCの非典型DNA結合能を制御する特異的核酸構造を見いだした。また、ORCの非典型DNAとの結合能に必要な機能構造を探索し、とあるサブユニットと独立して起こることを見いだした。更に、染色体複製とは異なる機能を持つ二重鎖DNA結合蛋白質が非典型DNAにも結合することを示唆するゲノミクス的知見も得た。現在、慎重に解析を進めている。
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