研究実績の概要 |
本年度は、前任での研究の論文化に貢献するとともに(改稿版投稿中)。過去に報告した一本鎖DNA上での出芽酵母ORCの機能構造分化と制御(Kawakami et al., 2019, Genes Cells)をベースとして、更に発展させた。ORCは複製起点DNA二重鎖らせんの認識に必須な蛋白複合体であり、我々が最大サブユニットOrc1内に見いだしたモチーフeukaryotic origin sensor (EOS)は、基質DNAが二重らせんか一本鎖かによってORCの機能構造分化をもたらす(Kawakami et al., 2015, Sci. Rep.; Kawakami et al., 2019)。細胞内には一本鎖DNAを含め、二重らせんよりも高リスクとされる種々の非典型DNA構造が存在する。ORCの真正細菌オーソログDnaAにおいては、一本鎖DNAとの結合能の重要性が実験的に裏付けられている(Ozaki, Kawakami et al., 2008; Sakiyama, Kawakami et al., 2013)。一方、ORCの非典型DNA構造による制御の細胞内における役割や関与する染色体領域についての実験的証拠がない。 そこで本年度は、これらの実験的証拠を得ることを志向して、出芽酵母細胞内におけるORCの特異的制御因子を重点的に探索することとした。昨年度開発した「ORC1機能を遺伝学的に亢進させるゲノム領域を簡便にスクリーニングするシステム」を用いて探索規模を拡大させたところ、従来は見逃していたスクリーニングの特異性の問題が判明した。更に改良を行い、スクリーニングの特異性を従来よりも上げることに成功した。併行して、異なる原理によって制御因子をスクリーニングするシステムの開発にも着手し、ORC1機能の制御に関わるゲノムクローンを見いだすことに成功した。今後、スクリーニングの規模を拡大しつつ、個別解析を進めることで、ORCと非典型DNA構造との連携に関わる証拠を得たい。併行して、昨年度の実績の論文発表にも着手している。
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