本年度は、複製開始蛋白質ORCのオーソログが複製起点DNAを一本鎖化する過程においてヒストンオーソログと連係する機構の論文化に貢献し、見出した機構が保存された普遍的なメカニズムであることを提唱した(NAR 2023)。並行して本年度は、申請者らが過去に報告した一本鎖DNA上での出芽酵母ORCの機能構造文化と制御(Genes Cells 2019)をベースとして、更に発展させた。まず、出芽酵母細胞内におけるORCの一本鎖結合に関する特異的制御因子を重点的に探索するため、昨年度構築した遺伝学的な網羅的スクリーニングシステムを発展させた上で大規模に実施した。その結果、出芽酵母細胞の増殖制御に関わるゲノムクローンを見出すことに成功した。うち一例は、ゲノムクローン内に複数の独立した染色体由来断片を含むことが判明した。また、遺伝学的解析の結果、ゲノムクローン内の複数の遺伝子がORCの最大サブユニットOrc1と直接的または間接的に協調して出芽酵母細胞の増殖阻害に関わることが示唆された。ORCの一本鎖結合能が今回見出した増殖阻害にどのように関わるかが今後の重要なカギと期待される。 並行して、ORCの一本鎖結合能を試験管内で詳細に解明するため、ORCサブユニットのサブユニットごとの活性を試験管内で簡便に解析する方法を開発し、個別解析のための基盤を概ね整備した。加えて、当初計画で予定していた2つの発展的解析もすすめ、それぞれ基盤を整備できた。
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