研究課題/領域番号 |
20K06562
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
若菜 裕一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90635187)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | メンブレントラフィック / ゴルジ体 / 小胞体 / オルガネラ膜接触 / コレステロール |
研究実績の概要 |
メンブレントラフィックは、タンパク質と脂質の輸送・プロセシングに重要な役割を果たし、細胞恒常性の維持及び組織形成に必要不可欠である。細胞は、その必要に応じ、タンパク質分泌の量と質を変化させるが、その制御機構はこれまでほとんど明らかになっていない。私たちは以前、ゴルジ体から細胞膜への構成性分泌を仲介するCARTS輸送小胞の形成に、小胞体-ゴルジ体膜接触部における脂質輸送が必要であることを明らかにした(Wakana et al., Mol Biol Cell, 2015)。また最近、小胞体膜のコレステロールセンサーであるSCAPが胞体-ゴルジ体膜接触部において、脂質ホスファターゼSac1を介してVAP-OSBPから成るコレステロール輸送複合体と相互作用し、CARTS形成を促進することを報告した(Wakana et al., J Cell Biol, 2021)。今回私たちは、SCAPがコレステロールとの結合依存的にSac1の活性を調節するかどうかを検証するため、新たにSac1活性を測定するためのin vitro実験系の構築を試みた。しかし、現時点において目的とする解析を行うのに十分な感度を得ることができていない。また、CARTS積み荷分泌タンパク質の一つであるPAUFのゴルジ体における選別機構の解明を目的とし、野生型PAUF及び分泌低下型変異体の結合タンパク質を比較した。二つのグループ間で差が見られたタンパク質に着目して質量分析を行なった結果、興味深いタンパク質を同定することができたことから、現在その解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・昨年度前期は、コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言とそれに伴う登校制限から、例年より研究を行う時間が大幅に失われてしまった。 ・SCAPによるコレステロール結合依存的Sac1活性調節機構の解明を目的として、Sac1活性測定系の構築を試みたが、現時点で良好な結果が得られていない。具体的には、SCAPとSac1を含むミクロソームを細胞から調製し、水溶性PI4P diC8を基質として遊離リン酸をマラカイトグリーンの呈色反応で検出したが、バックグラウンドに対して十分なシグナルを得られなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
・今回のPAUF結合タンパク質の探索により見出された分子の発現抑制を行い、PAUF分泌への関与を明らかにする。 ・SCAP及び小胞体-ゴルジ体膜接触部位の脂質輸送装置が、CARTS経路以外のタンパク質分泌経路の制御に関与するかどうかを検証するため、コレステロール依存的に輸送されることが報告されているインフルエンザウイルスのヘマグルチニンの同調輸送実験系を新たに構築し解析を行う。 ・新たに極性細胞(MDCK細胞)を用い、CARTS及び小胞体-ゴルジ体膜接触が極性輸送に果たす役割を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による緊急事態宣言とそれに伴う登校制限で研究活動の時間が削減されたため。 生化学実験用試薬の購入に充てる予定である。
|