研究課題/領域番号 |
20K06562
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
若菜 裕一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90635187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メンブレントラフィック / ゴルジ体 / トランスゴルジネットワーク / 小胞体 / オルガネラ膜接触 / コレステロール |
研究実績の概要 |
Carriers of the TGN to the cell surface(CARTS)は、トランスゴルジネットワーク(TGN)から細胞膜への構成性分泌経路を仲介する輸送小胞のひとつである。私たちは、TGNおけるCARTS積み荷選別の分子メカニズムを解明すべく、その積み荷分泌タンパク質であるpancreatic adenocarcinoma upregulated factor(PAUF)に着目し、積み荷受容体の探索を行なった。複数の候補タンパク質を解析した結果、Felix Campelo博士(ICFO, Barcelona)と共同研究を進めていたTGN46がPAUF受容体であることが示唆され、TGN46の内腔ドメインが積み荷選別に重要であることがわかった(Lujan et al, bioRxiv, 2022)。私たちはまた、TGNにおいて脂質ラフトと結合し頂端部細胞膜に輸送されることが知られるインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に着目し、Reverse Dimerization Systemを利用した同調輸送実験系を新たに構築した。HeLa細胞において、この実験系を用い解析を行なった結果、小胞体コレステロールセンサーであるSCAPがHAのTGNから細胞膜への輸送に必要であることが示唆された。SCAPはCARTS形成の場合と同様、小胞体-ゴルジ体膜接触部位におけるコレステロール輸送を介し、TGNからのHA陽性輸送小胞の形成を促進していると考えられる。今後、極性細胞での解析を進めることで、極性輸送制御に果たすコレステロールおよびオルガネラ膜接触の役割を解明できるのではないかと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初PAUFの積み荷受容体の候補として考えていたSLC3A2の解析や、PAUFの新規結合タンパク質として私たちが見出した候補タンパク質の解析からは、これらが積み荷受容体であることを示す有力なデータを得ることができなかった。しかし、Felix Campelo博士との共同研究から、TGN46がPAUFの積み荷受容体であることを裏付ける重要なデータが得られた。HeLa細胞を用いたHAのTGNから細胞膜への輸送解析では、CARTS輸送経路との共通点に加え、非常に興味深い相違点を見出すことができた。一方、極性細胞(MDCK細胞)での解析に関しては、いくつかの技術的な課題に直面しており、条件検討を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
・ TGN46の液―液相分離に基づく積み荷選別の仕組みを、TGN46とPAUFの相互作用に着目し、Proximity Ligation Assay等で解析する。 ・極性化させたMDCK細胞でSCAPの発現抑制を行い、HAのTGNから頂端部細胞膜への輸送に及ぼす影響を調べる。また、細胞表面タンパク質をビオチン標識し、定量解析を行う。 ・SCAPの下流で機能すると考えられるプロテインキナーゼD(PKD)が、HAのTGNから頂端部細胞膜への輸送に果たす役割を解明する。 ・脂質ラフト非依存的に頂端部細胞膜へ輸送されるとされている75-kDa neurotrophin receptor (p75NTR)の同調輸送実験系(Reverse Dimerization System)を新たに構築し、脂質ラフト依存性HA輸送におけるSCAPやPKDの機能と比較し解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの繰り越しがあったため。 生化学実験用試薬の購入に充てる。
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