研究実績の概要 |
本研究の目的は、小胞体-ゴルジ体膜接触部位を介した小胞体からトランスゴルジネットワーク(TGN)へのコレステロールとセラミドの輸送が、構成性分泌を制御する分子メカニズムの解明である。本研究の主な成果は下記の通りである。1. コレステロール依存的にTGNから細胞膜に輸送されることが明らかになっているインフルエンザウイルス・ヘマグルチニン(HA)の同調輸送実験系を新たに構築し、TGNからのHA輸送小胞の形成を可視化することに成功した。2.上記実験系を用い、HA輸送小胞の形成に小胞体-ゴルジ体膜接触部位のコレステロール輸送複合体および、小胞体膜のコレステロールセンサータンパク質であるSCAP(コレステロール輸送複合体と相互作用し、その制御に働くと考えられる:Wakana et al (2021) J Cell Biol 220, e202002150)が必要であることを明らかにした。3. HA輸送小胞は、私たちが以前発見したCARTS輸送小胞(Wakana et al (2012) EMBO J 31, 3976)と同様に、スフィンゴミエリンに富んだ膜構造を有し、その表面に低分子量Gタンパク質であるRab6aとRab8aが結合していることがわかった。4. HA輸送小胞の形成にプロテインキナーゼD(PKD)のキナーゼ活性が必要であることを明らかにした。また、極性細胞では側底部細胞膜へのタンパク質輸送に特異的に関与すると考えられていたPKDが、HAの頂端部細胞膜への輸送に必要であることが示唆された。5. TGN膜を切断することでCARTS形成に働くPKDは、HA輸送小胞の形成においては積み荷選別に関与する可能性が考えられ、PKDの新たな機能が示唆された。
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