研究課題/領域番号 |
20K06569
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
新海 陽一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00758378)
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研究分担者 |
戸井 基道 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門長 (50344213)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 液液相分離 / 線虫C. elegans |
研究実績の概要 |
細胞は不必要なタンパク質凝集体を除去することによって正常な細胞機能を維持している。我々は、線虫C. elegansの神経細胞核内にタンパク質凝集体を蓄積させたところ、あたかも出芽するように核膜が大きく変形し、タンパク質凝集体が核外へと排出されることを見出した。我々はこれまでに凝集体に特異的に結合する分子を単離した。この分子は、ウイルスの核外輸送に関与する分子として知られている。当該分子は、複数の異なるドメインを持つが、天然変性領域が凝集体と相互作用していた。近年、天然変性領域は、細胞内において液液相分離を介して、膜を持たないオルガネラを形成することが着目されてきている。液液相分離のドライビングフォースとしては、チャージを持つアミノ酸を介した静電相互作用や、疎水性アミノ酸同士の疎水性相互作用が知られている。そこで、当該分子の天然変性領域の役割について解析を進めたところ、当該分子の液液相分離が細胞内で起きることを見出した。さらに、当該分子は、フェニルアラニンとグリシンが隣り合ったモチーフが繰り返し出現するFGリピートドメインを有していた。このFGリピートドメインへの変異導入によって疎水性相互作用を阻害したところ、当該分子の細胞内液滴が解消されることを明らかにした。変異導入は、細胞内液滴のドライビングフォースを消失させるだけでなく、当該分子による凝集体認識にも異常が生じることが明らかになった。当該分子のノックアウト細胞株をCRISP/Cas9法によって作製し、その表現型を解析したところ、オートファジーフラックスに異常を示した。また、本研究から着想し、FGリピートドメインを有するタンパク質が織り成す非膜オルガネラネットワークを提唱した(Shinkai et al., Front. Cell Dev. Biol., 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質凝集体と相互作用する分子を同定でき、その機能解析を行い、液液相分離と凝集体認識の関連を明らかにしてきた。このことから、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該分子の液液相分離が、どのようにオートファジー制御を行っているのかについての解析を行うことで、凝集体除去メカニズムを明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
見込んでいた一部の生化学実験が遅れ、次年度以降に計画変更を行ったため。したがって、生化学実験用の物品費として使用する計画である。
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