ゲノム編集とは、特殊なDNA結合タンパク質を用いて、遺伝情報を含むDNAを自在に書き換える技術である。将来的に遺伝子治療での使用が期待されるが、編集に時間がかかる、標的ではないDNA配列を誤って編集するなどの問題がある。本研究では、単分子計測とタンパク質工学を組み合わせ、DNAに沿ったスライディング運動を促進させることで、速くて正確なゲノム編集タンパク質を合理的に設計することを目的とした。これまで、ゲノム編集タンパク質Cas9のスライディング運動を阻害する部位を同定し、DNA結合タンパク質Nhp6Aを対象としてスライディングを促進する部位を同定した。続いて、この知見を用いて、ゲノム編集タンパク質Cas9の改変を行った。さらに、DNA整列固定技術「DNAガーデン」と単分子蛍光顕微鏡を用いて、Cas9のスライディング運動が改変することで約8倍促進することを明らかにした。本年度は、「改変したゲノム編集タンパク質Cas9が改変前のCas9と比較してDNA配列の編集にかかる時間を短くできるのか?」の評価を進めた。さらに、「Cas9を改変することで、標的ではないDNA配列を誤って編集する問題をどの程度改善できるのか?」の評価も進めた。特に、スライディング運動の評価では、その評価に影響がでないように、ゲノム編集機能を欠損させたCas9変異体を使用していたが、ゲノム編集の評価では、上記の改変に加えてゲノム編集機能を復活させたCas9変異体を新たに作製し、使用した。
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