研究課題/領域番号 |
20K06575
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長江 雅倫 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60619873)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 糖鎖生物学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は生体内にごくありふれた糖鎖として存在するNアセチルグルコサミン(GlcNAc)が、どのようにして生体内で利用されているのかについて三種類のGlcNAcを転移する糖転移酵素(GnT-V, GnT-IVa, EOGT)の基質認識および転移機構に着目して明らかにすることである。令和2年度は初年度として以下の3つの研究成果を得ることができた。 1.GnT-V:GnT-Vは特定の糖蛋白質にのみGlcNAcを転移するが、その機構は不明であった。そこで岐阜大学生命の鎖研究センターの木塚康彦准教授と共同研究で立体構造を基に複数の点変異体を作成し糖蛋白質に対する反応性を評価した。その結果、アクセプター基質結合部位の周辺の変異が基質となる糖蛋白質の選択性に大きな影響を与えることがわかった。 2.GnT-IVa:GnT-IVaの生化学的な知見はほとんど得られていない。そこでマウス由来のGnT-IVaのアミノ酸配列解析を行い、酵素ドメインとは別に新しい機能ドメインがあること、この機能ドメインは触媒活性に必須であることなどを見い出した。さらにこのドメインのリコンビナント蛋白質を作成し、種々の生化学的な解析を行った。 3.EOGT:EOGTは小胞体で機能する糖転移酵素であるため、これまで大量のリコンビナント蛋白質を得ることが困難であった。それに対して我々と名古屋大学大学院医学系研究科の岡島徹也教授のグループでは培養細胞中から効率よくEOGT蛋白質を回収する方法を開発した。この方法を用いて構造解析に向けた精製条件の検討などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は令和2~4年度までの3年間で三つの糖転移酵素の基質認識及び触媒機構を構造生物学的に明らかにすることである。既にGnT-Vについては構造解析に成功しており、現在は構造解析と生化学的・細胞生物学的な解析を組み合わせることでGnT-Vの構造と機能の相関を明らかにするという次のステージに進んでいる。次にGnT-IVaはこれまで全く未知であった構造情報を得るための最初の段階として機能ドメインの同定に成功した。次年度はこの発見を端緒として具体的な構造決定に臨む予定である。最後のEOGTは最大の障壁と考えられていたリコンビナント蛋白質の調製について大きな進展を得ることができた。 以上の事から本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が対象とする三つのGlcNAc転移酵素、GnT-V, GnT-IVa, EOGTの構造解析に関する、今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1.GnT-V:引き続き立体構造に基づいた生理機能の解明を推進する。 2.GnT-IVa:我々が新しく見い出した機能ドメインの生化学的な解析と構造解析を推進する。 3.EOGT:我々が新しく開発したリコンビナント蛋白質の精製技術をより改良して高純度かつ高活性な酵素の抽出。および構造解析に向けた精製条件の検討。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初蛋白質を精製するためのカラムの新規購入を予定していたが、現在使用しているカラムが想定よりも高性能であったため次年度に繰り越し、結晶化試薬に使用する。
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