研究課題/領域番号 |
20K06576
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大出 晃士 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40612122)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CaMKII / リン酸化 |
研究実績の概要 |
CaMKIIは、神経の活動履歴を分子活性として記憶する可能性があるリン酸化酵素として知られるが、CaMKII活性が長期的に維持される機構や、その活性持続時間が細胞活性によって制御されるかは十分に明らかでない。そこで、網羅的な変異CaMKIIα/β活性測定系を用いて、CaMKIIα/β活性化状態の維持時間長を制御する分子機構と、時間長制御に関わる機能部位を明らかにする。そのために、①細胞抽出液系を用いたCaMKIIα/βのハイスループット測定系の構築、②CaMKIIα/β活性化時間長に影響を与える分子的要因の同定、③CaMKIIα/β活性化時間長に影響を与える責任残基の同定、④活性化時間長制御の意義の検証、を行う。 本年度は、主に①について取り組み、哺乳類培養細胞にCaMKIIα/βを過剰発現させ、この細胞抽出液を用いてペプチド基質に対するリン酸化活性を定量する新しい実験系を構築した。この系は発現CaMKIIα/β量に応じたリン酸化活性を定量可能であり、またCaMKIIを活性化するCa2+/CaM依存的にリン酸化活性を示した。従って、細胞抽出液に由来する他のカイネースの影響を極力排した形で、発現CaMKIIα/βの活性を見積もることが可能であると判断できる。また③へ向けた取り組みとして、特に自己リン酸化サイトに着目し、これらのサイトを網羅的に変異導入した変異CaMKIIα/βライブラリーを準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CaMKIIα/βのリン酸化活性を、多数の変異CaMKIIα/βに対して網羅的に測定できる実験系を構築することは本研究の重要な点であるが、本年度はこの実験系を構築することができた。計画通りの進行である。細胞抽出液を用いた実験系であるため、細胞透過性が低い化合物等についてもCaMKIIα/βの活性化時間に与える影響を調べることが容易である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度について特に、構築したCaMKIIα/βリン酸化活性測定系と自己リン酸化サイトの網羅的変異CaMKIIα/βライブラリーを用いて、②CaMKIIα/β活性化時間長に影響を与える分子的要因の同定、③CaMKIIα/β活性化時間長に影響を与える責任残基の同定を行う。②については、計画通りヌクレオチド誘導体など、細胞内の代謝産物との関係に着目して低分子化合物の選定を行う。また、③については、もし、活性化時間長に影響を与える変異が特定の領域に集中して生じるようであれば、これを活性時間長制御領域と捉え、周辺残基への変異導入など、自己リン酸化サイト以外の残基への変異導入も包括的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次の2つの理由から未使用額が生じた。一つ目の理由は、細胞抽出液を用いたCaMKII活性測定系が予定よりも順調に立ち上がったため、この実験系の構築に必要と見積もっていた質量分析関係の消耗品使用額が少なくなったためである。もう一つの理由は、一部の測定消耗品(特にマルチウェルプレート)について、2021年1月から3月にかけて、全国的に納期未定となるものが発生した。これを受けて、予定していた発注を取りやめたことによって生じた。この点については、何回かの実験の測定をまとめて一枚のマルチウェルプレート上で行うなどの工夫により、研究遂行への影響が生じないように対応した。
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