研究課題
前年度においては、細胞中の生体高分子のタンパク質濃度 (>100 mg/mL)に匹敵する部分重水素化 (72%重水素化)アルファクリスタリンの調製に成功した。この調製したアルファクリスタリンは、100%重水中でほぼ散乱的に不可視化できる特徴を有する。そこで、100 mg/mL72%部分重水素化アルファクリスタリンに最終濃度が1.9mg/mLになるように軽水素化アルファクリスタリンを混合した系(以降、濃厚系)を調整した。その濃厚系に対して37度にて時分割小角中性子散乱(TR-SANS)測定を行い、サブユニット交換の有無を確認した。時間経過に伴い前方散乱強度の低下が確認されてことから、この濃厚系に対してもサブユニット交換が存在することを実験的に確認することができた。更に、この交換速度を過去に調べた希薄系及び準濃厚系と比較すると濃厚系の方が交換速度が低下していることが確認された。希薄系及び準濃厚系におけるアルファクリスタリンのサブユニット交換はアルファクリスタリンの会合体からの単量体の解離及び再結合を素過程としたモデル(monomer-association-dissociation model)により説明することができたので、一つのアプローチとして同様のモデルで解析したところ濃厚系のサブユニット交換もうまく説明することができた。特に、会合体からの単量体の解離の速度を低下することで実験結果を再現することができた。この濃厚系における交換速度の低下が機能に影響を及ぼしていると示唆される。
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