研究課題/領域番号 |
20K06581
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松波 秀行 沖縄科学技術大学院大学, 生体分子電子顕微鏡解析ユニット, 研究員 (80444511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細菌べん毛 / フック / フックキャップ / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
細菌べん毛フックはフィラメントと回転子を繋ぐユニバーサルジョイントとして機能する部位である。フックはフックキャップに依存して一定の長さになるように分子レベルで制御されている。これまでに報告されているフックキャップのX線結晶構造解析では、フックキャップのC末端領域を含む部分領域の構造が明らかになっているが、フックキャップの機能に重要なN末端領域の構造は明らかになっていない。そこで、フックキャップに依存してフックが重合する仕組みを分子レベルで理解するために、フックキャップの完全構造を明らかにすることが必要であると考えた。これまでにX線結晶構造解析で決定した野生型フックキャップではN末端領域が柔軟で構造を明らかにできなかったため、野生型フックキャップの結晶化条件の再検索を行なったが、他の結晶化条件ではX線結晶構造解析に適した結晶は得られなかった。次に、タンパク質表面に存在する電荷をもつアミノ酸に変異を導入することで構造の安定化を促すことを期待して、N末端領域にある数カ所のリジンをグルタミンに変異させたKQ変異型フックキャップを作成した。これまでのところ、野生型フックキャップと同様の結晶化条件ではKQ変異型フックキャップの結晶が得られていない。そこで実験計画に先行して、結晶化の目的で精製したKQ変異型フックキャップを用いてクライオ電子顕微鏡による構造解析のに向けた予備的な実験を行なった。これまでに、KQ変異型フックキャップのクライオグリッドの作成条件の検討とテストデータを取得している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線結晶構造解析法によってフックキャップの完全構造を決定するために、結晶化に向けて、まずフックキャップのN末端側にある3つのリジン残基を全てグルタミンに置換したKQ変異型フックキャップを精製した。これまでのところ、野生型フックキャップと同じような条件ではKQ変異型フックキャップの結晶が得られていない。おそらく、変異を導入したためにタンパク質の表面電荷の違いによって野生型と同じ条件ではKQ変異型フックキャップが結晶化しなかったと考えられる。そこで、KQ変異型フックキャップの結晶化条件の検索する一方で、クライオ電子顕微鏡による予備的な構造解析を先行して開始した。精製したKQ変異型フックキャップをクライオ電子顕微鏡による自動測定で撮影したフレーム画像を専用の解析ソフトで画像処理を行なった。これまでの解析では、5回回転対称を考慮して分解能7-8オングストローム程度の三次元マップが得られているが、フックキャップの各サブユニットのN末端側にあるアルファヘリックスが形成するバンドル構造がようやく確認できる程度の分解能であった。一方、この三次元マップではフックキャップの各サブユニットのC末端側の構造は明確ではなかった。二次元クラス平均像から判断して抽出された目的の粒子がある特定の方向に偏った画像がほとんどで、このような場合、単粒子解析法で三次元構造を再構成するための構造情報が十分ではない。今後、クライオ電子顕微鏡による構造解析を進める上でクライオグリッド作成の条件検討や撮影条件の工夫が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
X線結晶構造解析による構造決定では対象のタンパク質の結晶化の段階が律速になることがある。今後フックキャップの変異体を作成した際に、KQ変異型フックキャップと同様に結晶化条件の検索が必要になれば効率的に進めることが難しくなることも予想される。また、結晶化には柔軟な領域を含むタンパク質の高分解能構造解析は困難になることも考えられる。今後の研究に向けて、X線結晶構造解析に向けた最適な変異型フックキャップの作成を試みる一方で、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行う。サルモネラ菌以外の細菌由来のフックキャップの構造解析についても同様にクライオ電子顕微鏡による構造解析を優先的に進める。フックキャップのようにわずか 120 kDa 分子量のタンパク質複合体の構造をクライオ電子顕微鏡で決定するためには、クライオグリッドの調製を最適化する必要がある。タンパク質の濃度や緩衝液の種類を検索するだけでなく、グリッドの素材やメッシュサイズの違いなどによってもタンパク質粒子が氷に包埋される状態が異なることがある。可能な限り薄い氷に包埋されたクライオグリッドを調製できるように凍結条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に設備備品として購入を予定していた支出を次年度以降に繰り越したため差額が生じている。設備備品については次年度以降に改めて購入を行う予定である。また、初年度に予定していた旅費等の支払いがなかったため使用額に差額が生じた。
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