研究課題/領域番号 |
20K06583
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 光二 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50302526)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ミオシン / 分子モーター / アクチン / シロイヌナズナ / 植物 |
研究実績の概要 |
植物細胞内ではアクチン繊維が極性を揃えて配向しており、またアクチン繊維も束化様になっている。この極性を揃えたアクチン繊維の上を,小胞体に結合したミオシンXIが一方向に動くので,植物細胞内では原形質流動と呼ばれている一方向性の流れが生じている。近年,様々な実験結果から「ミオシンXIとアクチン繊維との相互作用により,アクチン繊維は自律的に極性を揃えて配向する」ことが示唆されている。しかし,その分子機構は不明である。本研究においては、この機能解明のため、研究代表者が独自に開発したミオシンXIの発現、精製系により様々な種類のミオシンXIを精製し、そして、精製した様々な種類のミオシンXIを用いて、ミオシンXIの酵素・運動機能はじめ様々な生物物理学的、生化学的な手法による機能解析・構造解析を行った。 2022年2月のPNASで、ミオシンXIの最初の高解像度結晶構造を世界に先かげての発表したが、この構造解析したシロイヌナズナのミオシンXIの1つであるAtXI-2のモータードメイン(MD)はアクチンを極性揃えて配向させる性質およびアクチン繊維の束化能が顕著である。一方、シャジクモのミオシンCcXIはアクチンを極性揃えて配向させず、アクチン繊維の束可能がほとんどない。そこで、AtXI-2 MDの様々な部位をCcXIに該当領域に置換することにより、アクチン繊維が極性を揃えて配向させ、アクチン繊維を束化を担うAtXI-2 MD内の領域の探索を行った。その結果、これまで機能が未知であったミオシンのMDのN末端サブドメインにアクチン繊維の束化を担う部分があることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シロイヌナズナのミオシンXIの1つであるAtXI-2のMDはアクチンを極性揃えて配向させる性質およびアクチン繊維の束化能が顕著である。一方、シャジクモのミオシンCcXIのMDにはその活性が乏しい。そこで、AtXi-2 MDの様々な部位をCcXIに該当置換することにより、AtXI-2 MD内にあるアクチン繊維を束化させるの領域の探索を行った。その結果、これまで機能が未知であったミオシンのMDのN末端サブドメイン内にアクチン繊維を束化させる活性領域があることを明らかにした。そしてAtXi-2 MDのN末端サブドメインに様々な変異を与えることにより、AtXi-2 MDのN末端サブドメインに存在するアクチン繊維を束化を担う領域の絞り込みを行った。 しかし、代表者は2022年は病気で3度入院、手術した。その後も体調の回復につとめ、療養しながら研究をおこなったため、研究計画がやや遅れ、現在もまだ、AtXI-2 MDのN末端サブドメインのアクチン繊維を束化させる領域について、アミノ酸レベルまで絞りこめていない。
|
今後の研究の推進方策 |
AtXI-2 MDのN末端サブドメインにさらに変異を与えることにより、N末端サブドメインに存在するアクチン繊維の束化活性を担う領域の絞り込みを行なう。具体的にはAtXI-2 MDのN末端サブドメインの様々な部位をアクチンを極性の束化活性がほとんどないシャジクモのミオシンCcXI MDのの該当領域のアミノ酸配列に置換し、アクチン繊維の束化活性の減少を指標に絞りこみを行なう。この方法で領域の絞り込みに成功したら、今度は、アクチン繊維の束化活性がほとんどないシャジクモのミオシンCcXI MDのN末端サブドメインの該当アミノ酸配列をアクチン繊維の束化活性があるAtXI-2のアミノ酸配列に置換し、活性が上昇することを確かめる。さらに電子顕微鏡観察によりAtXI-2 MDによる束化活性を担う領域がどのような様式でアクチン繊維の束化を行っているか明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
代表者は2022年において、春から夏にかけて病気のため3度入院し、3度手術を受けた。また退院後も体調が万全でなく、体調管理につとめた。それにより研究に遅れが出て、年度初めに予定していた実験の多くができなかった。そこで次年度まで繰越し、次年度に実験を行なうことにした。これにより大きく繰越ができた。2023年度においては繰越金を使って2022年度当初の計画の実験を行なう予定である。
|