研究課題/領域番号 |
20K06591
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤原 郁子 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 助教 (10742075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MreB / 重合 / ATP加水分解メカニズム / スピロプラズマ / MreB繊維の可視化 |
研究実績の概要 |
A22によるMreB阻害メカニズムを明らかにすべく、まず、対象とする細菌のもつMreB(スピロプラズマ由来のMreB(SMreB))の機能を調べた。スピロプラズマには5つのMreBがあるが、そのうち最も大量に発現するものと、ATP加水分解が他より著しく遅いものに注目し、重合ダイナミクスについて調べた。ATP加水分解が遅いMreBの結晶構造解析から、加水分解に重要な枠割を果たすアミノ酸の部位を同定できた。これはアクチンにおける加水分解メカニズムと同じ機構であり、真核・バクテリアを超えてATP加水分解の機構が保持されていることを明らかにした。また同じスピロプラズマ内のMreBでも、束化するものとしないものがあることが分かった。 さらに、なぜスピロプラズマのみ5つもMreBを有するのかを調べる為、MreBの系統学について調べた。これらの成果は、国際誌1報、国内学会ワークショップ1回、ポスター発表4回にて国内外に発表し、活発な研究活動を行っている。
Alexa488で蛍光ラベルしたMreB繊維をTIRF下で観察を試みた。この実験にスピロプラズマ由来のMreB (SMreB)を2つ用いたところ、観察可能な長さのMreBが形成されなかった。負染色して電顕下でMreB繊維を観察したところ、今回用いた2種のSMreBは、どちらも短い繊維を形成した。この成果は、国内学会ワークショップで1回で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、研究室へのアクセスが制限されたため、数か月の遅延が生じた。 さらにMreBが突然に発現しなくなるという想定外のアクシデントが生じたが、試行錯誤の上にVectorと大腸菌株を変えることで修復できた。
以上のトラブルの対応には約4か月要したものの、その後に実験速度を上げることで結果につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
SMreBはATPがない状態でも繊維化することが分かり、A22の影響と重合の相関を調べるには適さないMreBであることが示唆された。今後は、A22の影響が顕著に分かるMreBに着目して研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
蛍光MreB繊維が形成されなかったことから、高倍率の対物レンズを買う以前に、実験条件の検討を行っている。またコロナ禍で旅費が使用されなかったために使用予定金額に変更があった。 今年度は、申請者の所属が変わったことにより、装置系の見直しの必要があること、また本人と学生の大阪市大までの移動費として計上を予定している。
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