研究実績の概要 |
本研究では、近年急速に発展したゲノム編集技術を利用し、インスレーター結合タンパク質に依存しない新しいタイプのインスレーターの物理的特性と作用機構およびゲノム機能発現と核内構造における役割を明らかにすることを目的とする。 バフンウニの内在のArsインスレーターへの変異導入を目的とし、より広範囲の欠失変異導入が可能なCRISPR-Cas3システムのウニへの適用を試みた。システムを構成する各因子(Cse1, Cse2, Cas3, Cas5, Cas6, Cas7)が連結したCascaseのmRNA、もしくは別々のmRNAを作製してウニ胚に導入したが、どちらにおいても現時点では成功には至っていない。 CRISPR-Cas9システムを介したノックイン法の確立では、Pks1遺伝子を標的としたドナーベクターの作製を行い、750 bpのホモロジーアームをもつHDR修復用ベクターに加え、40 bp程度の短いホモロジーアームを用いるMMEJ修復用のベクターも完成した。また、相同組換えによるノックイン効率を上昇させるために、ドミナントネガティブ型DNA Ligase IV発現ベクターの作製も終了した。現在、PCRによりノックインが検出できているが、高率上昇を目指して条件を調整中である。 Arsインスレーター(578 bp)の物理的特性とインスレーター活性の相関を調べるために、比較対象となる5つのラムダDNA(578 bp)を用意した。現在のところ、これらの配列はポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動度を示し、エンハンサーに対する効果も異なることが明らかとなった。また、Arsインスレーターの物理的特性の解析では、in vitro再構成系においてArsインスレーターが非常に不安定なヌクレオソームを形成できることが示された。
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