研究課題/領域番号 |
20K06602
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂本 尚昭 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00332338)
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研究分担者 |
粟津 暁紀 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00448234)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インスレーター / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9システムを介したノックイン法の確立では、Pks1遺伝子を標的としたドナーベクターの作製を行い、750 bpのホモロジーアームをもつHDR修復用ベクターに加え、約40 bpの短いホモロジーアームを用いるMMEJ修復用のベクターを作製し、Pks1 sgRNAおよびCas9 mRNAとともにウニ受精卵にマイクロインジェクションして、そのノックインの成否を確認した。どちらのベクターを用いた場合でも、PCRによる確認ではノックインを示すバンドが検出された。また、PCR産物の塩基配列解析の結果、正しくノックインされていることも確認できた。しかし、ノックインされたGFPの蛍光の検出には至っておらず、その効率は低いと考えられる。また、ノックイン効率を上昇させるために、ドミナントネガティブ型DNA Ligase IV mRNAの共注入も行ったが、顕著な効果は得られなかった。Cas9ニッカーゼ(nCas9)の適用も試みたが、今のところ顕著な効果は得られず、しかもnCas9でも変異の導入が検出されたため、現在原因を調査中である。 Arsインスレーター(578 bp)の物理的特性とインスレーター活性の相関を調べる実験では、前年度に5つのラムダDNA配列(578 bp)を用意し、それぞれエンハンサーに対する効果が異なることを示していたが、新たに約2000 bpのラムダDNA配列を調製してエンハンサーに対する効果を調べたところ、どの配列を用いてもエンハンサー活性が大きく低下した。内在のHpArs遺伝子ではエンハンサー/プロモーター間は約2000 bp離れているため、ラムダDNAの配列の特性が影響したものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウニ胚におけるCRISPR-Cas9システムを介したノックインに関しては、PCRで検出可能なレベルには成功しているものの、まだ効率は低く、インスレーターの解析に使えるレベルには達していない。さらに、ノックインを利用したインスレーター作用機構の解析には、効率を上昇させる工夫が必要と考える。 インスレーター活性の測定系については、エンハンサー/プロモーター間の距離が影響するケースが出てきたため、現在のシステムと並行して改善する必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
ウニ胚におけるノックイン法の確率ではさらなるチューニングが必要であり、HDR経路を促進するRad51等の共導入やNU7026等のNHEJ阻害剤を併用する効果についても検討したい。また、ssODNを介したノックインの利用も検討する予定である。 内在のHpArs遺伝子ではエンハンサー/プロモーター間は約2000 bp離れているため、HpArs遺伝子内在の配列中にエンハンサー/プロモーター間の相互作用を促進する配列があるという仮説を立て、現在HpArs遺伝子内在の配列に近いレポーター構築を作製している。これを利用して、HpArs遺伝子におけるエンハンサー/プロモーター間相互作用の分子メカニズムを改めて検討し、インスレーター活性の測定系を改善する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度末に大学内における業務が多忙だったため、一時的に実験がストップしたことにより、次年度使用額が生じた。 これについては、インスレーター活性測定系改善のためのレポーター構築に必要な酵素(消耗品)の購入に使用する予定である。
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