研究課題/領域番号 |
20K06611
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高橋 宏隆 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (70432804)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ユビキチン結合タンパク質 / ユビキチン鎖 / NF-kBシグナル |
研究実績の概要 |
本年度は、Surface plasmon resonance(SPR)によるZFAND3, 5, 6とK27を除く7種類のユビキチン鎖との結合力の決定による、3つのZFANDの各々のユビキチン鎖特異性の決定を目指した。しかし、SPR解析に用いたBiacore解析においてテクニカルなトラブルが続出し、現在この解析については中断している。そこで、免疫沈降によりZFAND5とK48、K63、M1鎖の結合を調べたところ、ZFAND5はK48を含む全てのユビキチン鎖への結合を示した。A20-Zinc finger型のユビキチン結合ドメインの多くは、M1鎖やK63鎖に高い特異性を示すものが多いが、ZFANDのA20-Zinc fingerドメインはそれら特異性の高いドメインとはアミノ酸配列が異なっていることが明らかとなった。また、ドメインスワップ変異体ZFANDを用いた解析から、ZFAND3はZFAND5, 6と比較してM1鎖への結合能が低いが、ZFAND3のA20-Zinc fingerドメインの一部をZFAND5, 6と置き換えることで結合能の顕著な向上が認められ、この領域が結合能の違いの原因である可能性が示唆された。 またR3年度に計画していた新規近接ビオチン化酵素AirIDを用いた細胞内での相互作用因子の探索を実施した。その結果、in vitroにおけるM1鎖への高い結合能や高いNF-kB抑制能を示したZFAND5, 6では、LUBACやNF-kBシグナルの構成因子との相互作用が認められた。一方で、M1鎖への結合能が弱く、NF-kB抑制能が低いZFAND3ではこれらのタンパク質との結合は認められなかった。現在、これらの相互作用因子について更なる詳細な解析を行っており、ZFANDファミリーのNF-kB抑制機構の解明が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R3年度はBiacore解析のテクニカルな問題で、ZFANDファミリーのユビキチン鎖特異性を決定することができなかった。Biacore解析に習熟している鳥取大学の佐藤先生に訪問を依頼して、こちらで解析を進める計画を考えていたものの、コロナ禍で実現しなかったことも大きな要因である。今後、Biacore解析については、愛媛大学内の専門家などの意見も交えて、系の確立を目指す。 一方で、細胞内での相互作用因子に関しては、早期にAirIDによる相互作用因子の探索が終了し、現在は個別にタンパク質の解析を進めている段階であり、こちらは当初の計画以上に良好な結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
R4年度は遅れているin vitroでのユビキチン鎖特異性解析を進める。Biacore解析が難しい場合には、Isothermal Titration Calorimeter (ITC)アッセイなどの代替アッセイなども検討する。また、ドメインスワップ変異体などを用いたZFANDのユビキチン鎖への結合様式の更なる解析を行い、ZFANDのユビキチン鎖特異性や結合能などに新規性が認められる場合には、ユビキチン鎖とその結合タンパク質の共結晶構造解析の専門家である鳥取大学の佐藤裕介先生にユビキチン鎖とZFANDの共結晶構造解析を依頼する予定である。 またAirIDで同定された細胞内相互作用タンパク質について、有力候補について免疫沈降などで結合を確認する他、それらのタンパク質の高発現やノックダウン細胞を用いて、ZFAND依存的なNF-kB抑制機構に関わるものを見出す。また今回はLUBACの高発現によってNF-kBを活性化した細胞においてZFANDの相互作用タンパク質を調べたが、今後はより広範な刺激であるTNFalpha処理細胞におけるZFANDの相互作用タンパク質を、AirIDを用いて同定し、両者の比較を行う。 これらの実験からZFANDファミリーの生化学的特徴づけと細胞内での役割の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は計画していたBiacore解析によるユビキチン鎖とZFANDの結合解析がほぼ実行できず、購入予定だった評品ユビキチン鎖やBiacoreのセンサーチップなどの消耗品の購入を見合わせた。また予定していた鳥取大学・佐藤裕介先生の研究室を訪問しての、Biacore解析や共結晶構造解析の打ち合わせについても、コロナ禍で見合わせたため、旅費も大幅に減った。そのため、次年度使用額が発生した。
|