研究課題/領域番号 |
20K06621
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
澤田 均 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (60158946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 受精 / ホヤ / 自家不和合性 / 自家不稔 |
研究実績の概要 |
カタユウレイボヤの受精における自家不稔機構に関しては、精子側のs-Themisと卵黄膜のv-Themisの遺伝子ペアが3箇所あり(s/v-Themis-A, B, B2)、その3ペアの全てが同一アレルペア(同一ハプロタイプ)であれば、自己配偶子と認識され受精が阻害されることを報告している。しかしこれは遺伝学的な実験的根拠であり、タンパク質間でアレル特異的に相互作用するか否かは不明である。その解析を目指して、s-Themisの遺伝子をHEK293細胞で発現することを試みたが、効率よく発現できる条件は見つかっていない。そこで哺乳類用にコドンを適正化し、DNAを全合成して発現を試みたが、それでも発現効率が悪かった。HEK293が腎臓由来の培養細胞のため転写効率がわるい可能性があるので、今後卵巣や精巣由来の培養細胞を用いて発現を再検討する。一方、カタユウレイボヤの受精は人工海水中のカルシウム濃度を10%程度に低下させると自家受精が可能になることを見出した。今回、マグネシウムとカリウムの影響も検討した。また浸透圧の影響も検討した。その結果、浸透圧の影響はほとんど見られないが、カリウム濃度を低下させるとわずかに自家受精率が上昇することも示された。s-Themis-B, B2のC末端にはカチオン透過性のPKDチャネルのドメインが存在する。よって、カリウムによる自家不和合性解除はPKDチャンネルの特性に起因する可能性が考えられる。 一方、マボヤの配偶子相互作用においては、卵黄膜VC70と精子Urabinが重要な機能を果たすが、その分子構造に関しては不明である。今回、VC70とUrabinをpolyGlyで連結して、AlphaFoldを用いてin silicoで結合予測を行った。その結果、VC70のユビキチン化されるLys234はUrabinとの相互作用後も露出していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
女川湾で養殖されているマボヤが被嚢軟化症に感染している可能性があることから、養殖マボヤを陸奥湾に移動することが漁協により禁止されている。それに加えて、陸奥湾でのマボヤ養殖が順調ではないことから、昨年度は陸奥湾産マボヤを漁師から大量に購入することができなかった。従って、東北大学浅虫海洋生物学教育研究センターで配偶子の大量調製と受精実験を行うことが難しく、当初計画が遅れている。今年度は、実験計画を多少変更し、今まで大量調製した精子と卵を用いた生化学的実験と受精阻害実験を中心に行うことを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるので、共同研究者の協力を得て、精力的に研究を進める。潜水により野生のマボヤを採集することで研究材料を確保することになると思われる。カタユウレイボヤに関しても組換え体発現条件の検討と結晶化を試みる。今年度は、静岡大学の齋藤貴子博士に共同研究者として参画していただき、当初計画の遂行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、マボヤの購入と東北大学浅虫海洋生物教育研究センターにて、マボヤ配偶子の大量調製と受精実験を行う予定があった。しかし、マボヤの養殖上の問題等があり漁師から材料を購入することができず、マボヤの受精に関する研究が遅れた。それにより残予算が出る結果となった。次年度は、共同研究者に参画してもらい、研究を推進させ、当初計画通りの実験遂行を目指す。
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