研究課題/領域番号 |
20K06624
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
杉浦 歩 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70784974)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ペルオキシソーム / ミトコンドリア / 視床下部 / 神経幹細胞 |
研究実績の概要 |
視床下部は複数の神経核からなり、末梢からのシグナルの受容や脳脊髄液成分を感知して応答することにより個体の恒常性維持の中枢として機能している。視床下部の機能維持には神経幹細胞やその神経新生能の維持が重要である。本研究課題では、神経幹細胞を中心に視床下部におけるペルオキシソーム動態をストレスモデルマウスや初代培養細胞を用いて解析し、その役割や作用機構の解明を目指す。 これまでに視床下部におけるペルオキシソーム、特にその構造に着目した研究はほとんどないので、基礎データを収集するために2020年度は主に視床下部由来初代培養細胞におけるペルオキシソームの局在・形態の同定に関する以下の実験を行った。 1.神経幹細胞から神経細胞へ分化するときのペルオキシソームやミトコンドリアの局在や形態を、免疫蛍光染色法やライブセルイメージングにより経時的に観察した。 2.視床下部基底部の一部は第三脳室に面しており、神経幹細胞が存在している。視床下部の変性誘導因子として高脂肪食摂餌が知られている。高脂肪食摂餌下のマウス視床下部では炎症反応や、小胞体ストレス応答、神経細胞死など様々なストレスが誘導される。それらのストレス誘引因子として第三脳室脳精髄液における遊離脂肪酸、特にパルミチン酸の濃度上昇が挙げられる。そこで、視床下部ストレス下におけるペルオキシソームやミトコンドリアの挙動を調べるために、初代神経幹細胞の培養液中にパルミチン酸を添加し、増殖や神経細胞分化への影響や、ペルオキシソームやミトコンドリアの局在および形態を免疫蛍光染色法により観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は2020年度より神戸大学から順天堂大学へ異動した。異動直後に新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言が発令され、実験開始が大幅に遅れてしまい、動物を使った実験は当初の予定より遅れている。一方で、培養細胞を使った実験は概ね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養細胞を用いた実験では引き続き、神経幹細胞の増殖や神経分化におけるペルオキシソームやミトコンドリアの動態を解析していく。ストレスモデルの実験条件も確立されつつあるので、ストレス下における神経幹細胞能とペルオキシソームの関係性をさらに詳細に解析していく。また、ペルオキシソーム動態制御や酵素の遺伝子発現抑制、薬剤によるペルオキシソーム機能阻害実験を行い、ペルオキシソーム動態と機能が神経幹細胞の増殖や神経分化に与える影響も検討していく。 マウス使用実験に関しては、引き続き実験環境を整備し、個体レベルでの解析を進めていく。 培養細胞を使った解析で興味深い新たな知見も得られつつあるので、今後は培養細胞を用いた実験に注力し、神経幹細胞を中心に視床下部におけるペルオキシソーム動態の制御機構やその細胞機能への作用機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は2020年度より神戸大学から順天堂大学へ異動した。異動直後に新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言が発令され、実験開始が大幅に遅れてしまい当初の計画よりも予算執行が少なく、次年度使用となってしまった。2021年度中に2020年度に予定していた実験を行い、繰越分を使用する予定である。
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