研究実績の概要 |
昨年度までの結果より、高脂肪食摂餌マウスやパルミチン酸処理をした視床下部由来初代培養細胞において、ペルオキシソームのクラスター(凝集)が観察された。しかし、同条件においてペルオキシソームクラスター形成に関わる既知因子のペルオキシソームへの集積は確認できなかった。本年度はペルオキシソームクラスター化の意義と分子機構を解明するために、その制御因子の同定に注力した。ペルオキシソームはペロキシン(Peroxin, PEX)と呼ばれる一連の遺伝子群により構造と機能が維持されている。これらPEX遺伝子の変異はペルオキシソームの一部の機能や構造異常を引き起こす。このような細胞では一部のPEXタンパク質の局在変化も誘導する。本年度はペルオキシソーム膜に集積してくるクラスター制御因子を同定するために、複数のPEX遺伝子に対するノックアウト細胞および薬剤誘導性発現システムを構築した。ノックアウト細胞はゲノム編集等により取得し、目的遺伝子発現の消失をタンパク質レベルで確認した。その後、ノックアウトされた遺伝子あるいはペルオキシソーム膜タンパク質に対する遺伝子をコードしたレンチウイルスを用いて、薬剤誘導性遺伝子発現安定細胞株を樹立した。ノックアウトされた遺伝子を発現誘導することによりペルオキシソームの構造異常が回復することを免疫蛍光染色により確認した。これらの細胞よりペルオキシソーム膜タンパク質を免疫沈降法により単離し、共沈降物を質量分析することにより結合タンパク質の同定を試みた。複数のノックアウト細胞と野生型細胞より得られた共沈降物を比較することで、非特異的結合タンパク質の排除を図り、制御因子候補を絞り込んだ。生物学的に独立した2回の実験により、膜動態の制御に関わる複数のタンパク質が候補因子として同定された。
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