研究課題/領域番号 |
20K06625
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
西村 珠子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40415261)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | BARタンパク質 / 細胞間接着 |
研究実績の概要 |
上皮細胞は、隣接する同種細胞との間に細胞間接着を形成する。しかしながら、細胞間接着の形成における細胞膜の役割については不明な点が多い。BARファミリータンパク質は、二量体で脂質膜に結合して、かつ多量体を形成することにより、膜の形態を制御する。BARタンパク質サブファミリーのひとつであるI-BARタンパク質は、突出膜の形成を制御する。しかしながら、細胞間接着の形成・維持におけるI-BARタンパク質の関与は明らかでない。そこで、I-BARタンパク質が細胞膜の突起構造を形成し、細胞間接着の形成を制御する分子メカニズムを検討した。 I-BARタンパク質をノックアウトした上皮細胞で細胞間接着分子の分布を調べたところ、細胞間接着分子のlateral面の分布がdiffuseになることがわかった。また、I-BARタンパク質をノックアウトした細胞の細胞層で、細胞層の透過性が上昇した。また、I-BARタンパク質遺伝子上流にmVenusをノックインしたCaco2細胞株を用いてライブ観察を行い、細胞間接着の形成時におけるI-BARタンパク質の挙動を詳しく観察したところ、接着形成直前のラメリポディアにI-BARタンパク質が分布する現象を見出した。 細胞間接着におけるI-BARタンパク質とアクチン繊維の動態の相関性を調べるため、現在、I-BARタンパク質の上流にmVenusをノックインした細胞に、Lifeact-mCherryを安定的に発現する細胞を作製中である。また、mVenusノックイン細胞を使った免疫沈降を行い、MS解析によりI-BARタンパク質と相互作用する分子を探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した実施計画をほぼ予定通り行い、おおむね期待通りの成果を得ることができた。 I-BARタンパク質のノックアウト細胞でのフェノタイプを調べ、I-BARタンパク質遺伝子上流にmVenusをノックインしたCaco2細胞株でライブ観察を行った。現在、ノックイン細胞やI-BARタンパク質ノックアウト細胞にmCherry-Lifeactを発現した細胞、I-BARタンパク質のノックアウト細胞にI-BARタンパク質の全長や欠失変異体を発現したレスキュー細胞を現在作製中である。また、ノックイン細胞を用いて、I-BARタンパク質と相互作用する分子を探索中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究成果に基づき、その発展を図る。例えば、I-BARタンパク質と相互作用して細胞間接着を制御するタンパク質を同定し、その作用機序を調べる。さらに、I-BARタンパク質の上流に点滅蛍光タンパク質をノックインした細胞を作製し、超解像顕微鏡で観察することにより、I-BARタンパク質の分子レベルでの分布を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに研究を効率的に、かつ試薬購入を計画的に進めた結果、直接経費を予定よりも節約することができた。翌年度の実験計画において、抗体やsiRNAを各々複数個購入する必要が見込まれるため、翌年度分の助成金と合わせて効率的かつ計画的に使用する予定である。
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