研究課題/領域番号 |
20K06632
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩本 政明 日本大学, 文理学部, 教授 (80450683)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テトラヒメナ / 繊毛虫 / 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン / 免疫電子顕微鏡法 |
研究実績の概要 |
本研究は、繊毛虫テトラヒメナの大核と小核に見られる機能の異なる核膜孔複合体(NPC)について、両者の構造を比較し、それらが一般的な真核細胞のNPCとどう異なるのかを明らかにすることによって、NPCが取り得る構造的バリエーションと、その機能的な意味について理解することを目指す。 本年度は、GFP融合したテトラヒメナの核膜孔タンパク質(ヌクレオポリン)が、NPC内のどこに配置するのかを免疫電子顕微鏡法で検出するために行う抗GFP抗体を用いた免疫染色の実施条件を検討した。 一般的な工程で免疫染色を行った場合、ヌクレオポリンの種類によって染色効率が大きく異なった。Phe-Glyリピートを持つFG-NupであるMacNup214とMicNup214は、両者とも一般的な染色工程で強い染色像を得ることができた。一方、別のFG-NupであるMacNup98AとMacNup98Bは染色が非常に弱く、inner ring構造の構成成分であるNup107とNup85については全く染色されなかった。これら染色が不十分だったものについては、ホルムアルデヒドで固定、TritonX-100で抽出を行った後、トリプシンによる抗原賦活化の工程を追加した。その結果、劇的な染色効率の改善が見られ、Nup107、MacNup98AおよびMacNup98Bについては、賦活化せずに十分な染色強度が得られたMacNup214およびMicNup214と同程度の染色像を得ることができた。しかしながら、Nup85は賦活化によって染色されるようにはなったが、他のNupと比較して十分な染色強度を得るまでには至らなかった。 本年度の進展によってほぼ全てのテトラヒメナのヌクレオポリンについて免疫電子顕微鏡観察を実施できる目処がついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は本年度から日本大学文理学部へ異動したが、新型コロナの感染拡大の影響を受けて、研究機器および研究材料の移送、研究室環境の整備が大幅に遅れ、十分な研究時間を作ることができなかった。しかしながら、実施した実験についてはその多くで期待通り、あるいは期待以上の結果を得ることができたため、進捗状況はおおむね順調であると区分することができる。
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今後の研究の推進方策 |
ほとんどのヌクレオポリンで適切な免疫染色の条件が定まったため、順次、免疫電子顕微鏡観察を実施し、データ収集に取りかかる。全てのヌクレオポリンを観察する予定であるが、本研究では大小核NPCの構造の相違を検出することを主目的とするため、特にinner ring構造とouter ring構造の構成成分であるヌクレオポリン(Nup308、Nup155、Nup93【以上inner ring】、Nup160、Nup133、Nup107、Nup96、Nup85、Seh1、Sec13【以上outer ring】)について優先して進めていく。 研究協力者である情報通信研究機構未来ICT研究所の松田厚志主任研究員と福田紀子技術員の補助を受け、同機構が所有する透過型電子顕微鏡を用いてデータ取得を行う。
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