研究実績の概要 |
本研究は、繊毛虫テトラヒメナの大核と小核に存在する機能の異なる核膜孔複合体(NPC)について、両者の構造を比較し、それらが一般的な真核細胞のNPCとどう異なるのかを明らかにすることによって、NPCが取りうる構造的バリエーションと、その機能的な意味について理解することを目指している。2年目の本年度は、免疫電子顕微鏡観察のための最適な試料作製法を確立できた核膜孔タンパク質(Nup)から順次、電顕観察を実施した。これまでにNPCのinner ring構造を構成するNup155とNup93、outer ring構造を構成するNup160, Nup133, Nup107, Nup96, Nup85, Seh1の観察を終えた。Nup155とNup93はともに、それらの存在を示す金粒子のシグナルが大核と小核両方のNPCにおいて細胞質側(上側)と核内側(下側)に同程度検出された。このことからinner ringは両核のNPCの上下に対称的に配置していることがわかった。ところが、Nup160, Nup133, Nup107, Nup96, Nup85, Seh1はいずれも小核のNPCでは細胞質側と核内側の両側にシグナルが検出されたが、大核のNPCでは核内側にしか検出されなかった。したがって、小核のNPCはouter ringが上下に対称的に配置する典型的な構造である一方、大核のNPCは細胞質側にouter ringを欠くという非常に特殊な構造を呈していると考えられた。
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