本研究では、Atg8とオートファゴソーム形成因子との結合がオートファゴソーム形成に及ぼす影響を理解し、Atg8結合蛋白質と結合できないAtg8変異体を用いたオートファゴソーム形成系の開発を試みる。このオートファゴソームを単離し内容物を解析することで、受容体を介さないカーゴの取り込みがAtg8に依存しているのかどうか、あるいは他のオートファゴソームへの取り込みを規定する因子の同定を目指している。 前年度に引き続き、Atg8変異体としてF104A変異体とF104A/Y106A変異体を用いて解析を行った。液胞リパーゼであるAtg15の欠損をこれら細胞に加えることで、オートファゴソームと液胞の融合後に、液胞内に形成されるオートファジックボディが分解を免れて蓄積するかを観察した。すると、野生型細胞と同様にAtg8変異体でも融合したオートファゴソームの蓄積が観察され、液胞の精製も可能であることが明らかとなった。そこでこのAtg15欠損細胞を用いてオートファジックボディが蓄積した液胞を精製し、液胞内容物を質量分析法により解析することにより、Atg8の野生型および変異体がそれぞれ形成するオートファゴソーム特異的なカーゴの同定に成功した。今後はこれらカーゴについて解析することで、バルクオートファジー特異的なカーゴと選択的オートファジー特異的なカーゴの分類が可能となり、オートファゴソームへのカーゴの取り込みにおけるAtg8の寄与についての知見が深まることが期待される。
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