研究課題/領域番号 |
20K06639
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
吉田 英樹 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (30570600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / mRNA / 局在化 |
研究実績の概要 |
mRNAの細胞内局在化の分子機構及び生物学的意義の解明のため、ショウジョウバエ初期胚の同一領域に局在化する5つのmRNA(dia、ani、cno、pyd、smash)をモデルとして、それぞれの局在化機構を比較することを目的とした。申請者らは、これまでに、ani mRNAが自身の翻訳産物を介して、pseudo-cleavage furrow (PCF)と呼ばれる一過性の細胞膜の陥入の先端に局在化することを報告したが、dia mRNAもani mRNAと同様に自身の翻訳産物を介してPCFに局在化することを見出した。更に、アミノ酸配列を調べたところ、aniと同様diaに関しても、翻訳の停滞を引き起こすプロリンの連続配列であるポリプロリン配列が存在していることに気がついた。このポリプロリン配列を除去したdia発現ショウジョウバエの初期胚を用いた解析から、通常diaタンパク質の発現が見られない発生初期においてもdiaタンパク質の発現が確認された。一方、cno mRNAは、3’非翻訳領域(3’UTR)にステム・ループと呼ばれる二次構造が形成され、そのステム・ループ依存的に局在化している予備的な結果を得ていた。そこで、3’UTR欠損cno mRNA発現ショウジョウバエを作製し、3’UTR欠損cno mRNAの局在をin situハイブリダイゼーションにより調べたところ、PCFへの局在は認められなかった。また、pydに関して、初期胚において発現しているスプライシングバリアント(SV)の同定を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス蔓延による登校自粛期間があったため、令和2年度に計画していた内容に一部遅れが出ている。dia、cno mRNAの一部を欠失したmRNAを発現する遺伝子導入ショウジョウバエの作製及び、in situハイブリダイゼーションによる欠失mRNAの局在解析は、diaは完了したが、cnoに関しては作製したCDS欠失mRNA(ΔCDS)発現系統のΔCDS mRNAの発現量がin situハイブリダイゼーションによる検出に不十分であったため、解析が完了していない。また、初期胚において発現しているpydのSVをPCRおよびリアルタイムPCRにて検出した。ショウジョウバエのデータベース(FlyBase)によると、pydは12種のSVが予想されているが、通常のPCRにより3種のSV(SV-A, G, M)、リアルタイムPCRにより2種のSV(SV-I, F)が検出された。
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今後の研究の推進方策 |
本年も新型コロナウィルス蔓延のため、研究室の活動を必要最低限にするよう制限されており、大学の指示に従って研究活動を行う。その上で、まず、令和2年度に予定していた以下の2つの計画を遂行する。一つは、cno ΔCDS mRNAの初期胚における局在をin situハイブリダイゼーションにより解析する。発現量が低い場合、ΔCDS mRNAの遺伝子量が2倍となる系統を、交配により作製する。二つ目は、初期胚におけるpydとsmashのSVの発現を通常のPCR、リアルタイムPCRにて解析する。この解析が終わり次第、令和3年度に計画していたpydおよびsmashのPCF局在に必要なRNA領域の同定を進める。また、diaのポリプロリン配列が、翻訳の停滞に関与し得るかどうか、in vitro系、培養細胞を用いた解析により検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、新型コロナ蔓延のため、大学の閉鎖、研究協力者である大学院生の研究活動の制限などがあり、計画通り研究が進まなかったため、経費の一部を次年度に繰り越した。令和3年度は、令和3年度の研究計画に加え、令和2年度に計画していたが完了していない研究も行うため、令和2年度より繰り越した経費も併せて使用する。
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