本研究では、ミドリゾウリムシの共生藻Chlorella variabilis NC64A株から重イオンビーム照射によりホストへの共生能を欠く突然変異体(NC64A-#48)を作出した。NC64AとNC64A-#48のゲノム情報を新たに取得し、それらのゲノム配列とmRNA配列の比較を行った。その結果、ゲノム配列には差は見られなかった。しかし、mRNA配列では本来イントロンであった配列がNC64A-#48の5’末端に組み込まれており、開始コドンと終止コドンの位置も変化し、ORFが非常に短くなっていると予想された。すなわち、NC64A-#48では何らかの理由でスプライシング異常が生じ、p120のmRNAが本来の配列ではなくなったことが、タンパク質発現異常の原因である可能性が示唆された。Chlorella variabilis NC64A株は、ミドリゾウリムシ以外にも、ミドリアメーバ(Mayorella viridis)、ミドリラッパムシ(Stentor sp.)という原生生物や、多細胞のミドリヒドラ(Hydra viridissima)にも共生することが知られている。これらの生物からクロレラを除去した白色系統を作製し、これらの生物に対してNC64A-#48株が共生するかどうかを調べた。その結果、これらの生物に対してもNC64A-#48株が再共生できないことがわかり、p120の機能が宿主の種を超えて一般的であることが示唆された。
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