研究課題
本研究では、細胞によるグルコース感知機構を明らかにするために、数理モデル解析を行う。数理モデルの構築には、ショウジョウバエ脂肪体培養系のライブイメージングで取得した、グルコース濃度とグルコース感知の程度を表す数値データを用いる。今年度は、ライブイメージングデータを取得するための実験系の構築を行った。まず、脂肪体におけるグルコース濃度変化をモニターするための黄色蛍光タンパク質GreenGlifon系統を作製した。脂肪体プロモーターに感度の異なる3種類のGreenGlifon遺伝子 (GreenGlifon50, 600, 4000) をそれぞれ連結したベクターを、ショウジョウバエゲノムに挿入した。脂肪体で発現したGreenGlifon50は、0~1 mMの範囲においてグルコースの増減に良好な反応を示したが、1 mM以上ではグルコース濃度に応じた蛍光強度の変化が見られなかった。より感度の低いGreenGlifon600および4000は、0.1 mM以下ではグルコース濃度に応じた蛍光強度の変化が見られなかったが、0.1~100 mMの範囲においてグルコースの増減に良好な反応を示した。これらの結果から、ショウジョウバエの体液中グルコース濃度を考慮した生理的条件におけるイメージングには、GreenGlifon600および4000が適していると判断した。一方、グルコース感知は、グルコース応答性転写因子Mondoの核移行を指標として検出する。そこで、Mondoの細胞内局在を赤色蛍光タンパク質mAppleでモニターするための系統を作製した。CRISPR/Cas9システムを利用したノックインを用いて、ゲノム中のMondoタンパク質コード領域のC末端にmAppleを挿入することにより、MondoはmAppleとの融合タンパク質 (Mondo::mApple) として発現させた。Mondo::mAppleは0.1~100 mMの範囲においてグルコースの増減に良好な反応を示した。これらの結果に基づき、ライブイメージング用の系統として、GreenGlifon600または4000とMondo::mAppleの両方を持つ系統を作製した。
3: やや遅れている
ライブイメージングに用いるマーカー系統を作製し、生理的条件で使用できることを確認したが、データ取得には高感度・高速で撮影が可能なレーザー顕微鏡が必要である。研究協力者の設備を用いる予定であるが、新型コロナウイルス流行のため、訪問することができなかった。そのため、進捗状況はやや遅れている。
作製したマーカー系統を用いてライブイメージングの条件検討を行う。取得データが数理モデルの構築に適しているかを、数理モデルを専門とする研究協力者と検討しながら、実験条件を決定する。
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