研究課題
本年度はマウスにおけるポリオール経路の役割を解析した。ポリオール経路の第2段階を触媒するソルビトール脱水素酵素 (Sord) をCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトし、ポリオール経路の機能を完全に欠損したマウスを作製した。このノックアウトマウスを用いて、ポリオール経路がマウスにおいてもグルコース摂取依存的にChREBPを活性化するグルコース感知システムとして機能するかどうか解析した。マウスにグルコースを経口摂取させ、15分後の肝臓におけるChREBPの核移行を解析したところ、野生型ではグルコース摂取依存的に核移行が見られたのに対し、Sordノックアウトマウスではグルコース摂取に応答した核移行は観察されなかった。これらの結果から、ポリオール経路はマウスにおいてもグルコース感知システムとして機能することが明らかになった。また、Sordノックアウトマウスではグルコース摂取後の血糖値の回復が遅れることが明らかになった。インスリン分泌は正常であったため、インスリン感受性が低下していることが示唆された。これらは先行研究で報告されているChREBPノックアウトマウスの表現型の類似しており、ポリオール経路がChREBPの上位で機能することと矛盾しない。次に、糖の過剰摂取による肥満や肝脂肪蓄積におけるポリオール経路の関与について検討した。マウスにグルコース水を14週間与え、体重および肝脂肪蓄積を測定した。その結果、野生型とSordノックアウトマウスにおいて体重増加に差はなく、肝臓脂肪量は予想に反してSordノックアウトマウスの方が多い傾向が見られた。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた解析において、ポリオール経路がショウジョウバエの場合と同様にグルコース感知システムとして機能し、一定の生理機能を有することを示すことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
最終年度は、複数のグルコース代謝経路の中でポリオール経路が細胞内に流入したグルコース濃度を最も良く反映する経路であるのかどうかを、ライブイメージングと数理モデルを用いて解析する予定である。解析に必要なショウジョウバエ系統は初年度に作製した。ライブイメージングには研究協力者が所有する顕微鏡が必要であり、コロナウイルス流行のため訪問が難しかった。今後コロナウイルス流行の状況を考慮しつつ、実施したいと考えている。
研究協力者の研究室を訪問して実験を行う予定であったが、コロナウイルスの流行により訪問することができなかった。2022年度はコロナウイルスの流行を注視しつつ訪問する予定であり、次年度使用額は旅費として使用する予定である。
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基礎老化研究
巻: 45 ページ: 31-36