研究課題/領域番号 |
20K06649
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高木 昌俊 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60324779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Ki-67抗原 / トポイソメラーゼ / 分裂期染色体 / KiTop複合体 |
研究実績の概要 |
Ki-67抗原は分裂期染色体の周囲を縁取るように局在するタンパク質で、そのタンパク質レベルが静止期の細胞で著しく減少することから、細胞増殖マーカーとして長年にわたり汎用されている。一方でKi-67抗原の具体的な機能は長らく未知のままであったが、応募者らの最近の研究により、分裂期染色体の形態を(コンデンシン複合体とは独立の機構で)染色体の表層から支持していることが示された。さらにその後の研究で、少量のKi-67抗原がII型トポイソメラーゼα(トポIIα)と分裂期染色体上の20から40の領域において相互作用していることを見出した。本研究では、両者を含むタンパク質複合体 (「KiTop複合体」と呼ぶ) の性状および機能を多面的に解析し、「KiTop複合体が分裂期染色体構築において機能するのか、あるいは他の局面でより重要な役割を果たすのか」を見極める。 初年度においてはまずKiTop複合体の細胞内での振る舞いを解析し、KiTop複合体が分裂期において細胞質と染色体の間を(複合体を保ったままダイナミックに)行き来していることを示唆した。KiTop複合体と分裂期染色体のインターフェースをKi-67抗原が担っていることも示唆した。いずれの知見もKiTop複合体の機能を理解するための重要な手がかりになると思われれる。 今年度(2年目)は「2段階の免疫沈降によるKiTop複合体の精製」に取り組んだ。第一段階として、内在性トポIIαのC末にALFAタグをノックインした細胞の抽出液からトポIIαを含む複合体(群)を回収する(免疫沈降ののちにALFAペプチドとの競合により液相に回収する)ことに成功したが、意図に反して、Ki-67抗原を含む複合体は回収されなかった。第二段階としてKi-67抗原に対する抗体で免疫沈降し、回収された因子群の組成を明らかにする予定であったが、その前段階で頓挫した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ALFAタグを利用したKiTop複合体精製の戦略がワークしていないため、ALFAタグの位置を変更して検討する必要や、戦略変更を視野に入れる必要が生じ、進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
KiTop複合体の精製(およびタンパク質組成の解析)が本研究を推進するための肝であるが、現段階で成功していない。「ALFAタグを利用したKiTop複合体精製」の戦略の細部を見直し再挑戦する。またKiTop複合体精製を効率よく進めるための(さらにはKiTop複合体形成を特異的に阻害する方法を考案するための)基礎データとして、Ki-67抗原とトポIIαのインターフェースについての情報を得る。具体的には、それぞれの因子について欠失変異体のシリーズを作成し、それらを使用して相互作用に必要な領域を明らかにする。 KiTop複合体の精製が困難である場合にも、PLA法(proximity ligation assay)によりKiTop複合体の組成についての理解を得る。具体的にはKi-67抗原の相互作用因子として同定されているタンパク質群の中から、トポIIαと近接して挙動するものをPLA法により探索する。またトポIIαの相互作用因子として同定されているタンパク質群の中から、Ki-67抗原と近接して挙動するものをPLA法により探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅れに伴い、今年度に計画していた研究の一部を次年度に行うこととした。またコロナ禍にあり学会参加をいくつか見送りとした。これらの理由で次年度使用額が生じた。次年度に当初の計画に沿った目的で使用する。
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