研究課題/領域番号 |
20K06651
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
若松 義雄 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60311560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 異形歯性 / Msx1 / 遺伝子発現制御 / エンハンサー / 4C-seq / 顎原基 / 発生 |
研究実績の概要 |
初年度の終盤におこなった4C-seq解析によって、ニワトリ4日胚の顎原基においてMsx1遺伝子プロモーターと相互作用するゲノム配列を同定し、エンハンサー候補とした。そこで今年度は、ニワトリ、オポッサム、マウスのMsx1遺伝子近傍の配列をVISTAプロットによるアラインメントをおこない、4C-seqで得られたピークと比較したところ、2つのピークについて対応する配列がオポッサムで保存されている一方マウスでは失われていることが明らかとなった。これは、Msx1遺伝子の制御メカニズムがマウスでは異なっていることを示しており、本研究課題発案のもとになっているデータ(Wakamatsu et al., 2019)から予想されるマウスとオポッサムでの歯式の違いをもたらすゲノム配列の変化と一致した。これらの研究成果は、日本発生生物学会の年会で発表した。現在これらの配列について、GFPレポーター遺伝子を作成中であり、最終年度にその活性を解析予定である。 また、DNA配列としてはニワトリ、オポッサム、マウスで共通して保存されていても、マウスの顎原基でのみ使われていないエンハンサーがある可能性も考えられた。そこで、マウス10.5日胚から顎原基を取り出し、前年度にニワトリ顎原基でおこなったのと同様に4C-seqをおこなって、Msx1遺伝子のプロモーター領域と相互作用する配列を同定する実験をおこなった。これまでfastqデータを得るところまで進んでおり、次世代シークエンスデータのドライ解析をおこなえる状態まできている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画立案時に予定していた実験・解析手法を大幅に変更して、初年度から次世代シークエンス技術を用いた4C-seq解析を導入した影響から、新しい実験手技やドライ解析手法の習得に時間がかかったため、全体として研究の進捗は予定より若干遅れている。しかし、より網羅的かつ高精度のデータが得られるようになったことから、本研究課題の中心である顎原基におけるMsx1遺伝子発現制御の種差について、最終的には予想していた以上のことが明らかになると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス顎原基におけるMsx1遺伝子の4C-seqデータについてドライ解析を進める。塩基配列の種間比較のデータやニワトリ顎原基をもちいた4C-seqデータと比較して、Msx1遺伝子の発現の種差を説明できるエンハンサー配列候補の抽出を進める。また、ニワトリの4C-seqの解析結果等から同定した、ニワトリ・オポッサムで保存されているがマウスで保存されていないMsx1顎原基エンハンサー候補配列の活性について、GFPレポーター遺伝子を構築する。このレポーター遺伝子をニワトリ胚にエレクトロポレーション等の方法で導入し、顎原基での活性を調べる。また、レポーターを遺伝子導入した顎原基の器官培養をおこない、FGF等のシグナル伝達経路を操作した場合のレスポンスを解析する。これらの解析により、哺乳類の異形歯性を制御する重要なホメオボックス遺伝子であるMsx1遺伝子の発現制御メカニズムおよび動物種間での違いについて、理解が飛躍的に進むと考えている。
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